法界寺 (中津川市)

法界寺

法界寺は、岐阜県中津川市下野に位置する臨済宗妙心寺派の寺院です。良雪山と号し、本尊には釈迦如来を祀っています。また、恵那中部新四国八十八ヶ所霊場の六番札所としても知られています。法界寺は、その歴史の中で、宗派の変更や、地域社会との関わりなど、様々な変遷を経験してきました。

歴史

法界寺の始まりは、慶長6年（1601年）に浄土宗の法界庵として、下野村の田代の良雪にて明天によって開山されたことに遡ります。その後、万治元年（1658年）に二世の薫誉貞岩が亡くなるまでの38年間、浄土宗寺院として存続しました。

一方、元和元年（1615年）には、苗木藩初代藩主の遠山友政が、菩提寺として臨済宗妙心寺派の雲林寺を苗木に創建しました。その後、苗木藩は、領内に雲林寺の末寺を増やし、他宗派の寺院を臨済宗に改宗させる政策を推進しました。

寛文元年（1661年）、苗木藩3代藩主の遠山友貞の時代に、法界寺は臨済宗妙心寺派に改宗し、雲林寺の末寺となりました。改宗後、初代住職には仙翁禅洞が就任しましたが、元禄初期の二世・元室是享の代に現在の場所に移転したと伝えられています。移転の理由としては、飛騨街道が田代通りから馬場通りに変更されたこと、上野村の檀家が加わったこと、そして田瀬村で曹源寺が廃寺となったため、その檀家が移ってきたことが挙げられます。また、火災による焼失も移転の理由の一つとして考えられています。

元禄13年（1700年）には、下野村、田瀬村、上野村の檀家によって、間口6間、奥行5間の本格的な本堂が建立されました。ただし、苗木藩の方針により、木曽五木は使用されず、杉材が用いられました。

江戸時代末期から明治初期にかけて、苗木藩では平田篤胤の復古[[神道]]の影響を受けた青山景通・青山直通親子による廃仏毀釈運動が活発化しました。藩主の遠山友禄は、青山景通に復古[[神道]]を勧められ、深く傾倒しました。

明治3年（1870年）8月15日、苗木藩は廃仏毀釈を藩内に通達し、下野村の一部と田瀬村、上野村の檀家は神道への改宗を強制され、法界寺を離れることとなりました。苗木藩内の15の寺院のうち14の住職が還俗を余儀なくされましたが、苗木遠山氏の菩提寺である雲林寺十七世の浅野剛宗（剛宗宗戴）は還俗を拒否しました。青山景通は浅野剛宗に教諭としての雇用を提案しましたが、浅野剛宗はこれを拒み、代わりに黄金300両と苗木遠山氏の位牌、仏具を受け取り、廃仏毀釈の影響を受けなかった法界寺の一室に移り住みました。この時の法界寺の住職は八世の法堂恵周でした。

また同年、恵那郡坂下村にあった長昌寺が廃仏毀釈によって取り壊された際、本尊の木造釈迦如来坐像と木造役行者倚像が法界寺に移されました。

明治30年（1897年）には、九世の憲洲宗憲が益田郡の地蔵寺へ転住しました。明治42年（1909年）に坂下村に蔵田寺が移築されると、法界寺に安置されていた木造釈迦如来坐像と木造役行者倚像は蔵田寺に移され、現在に至ります。

昭和5年（1930年）には、十世の渓宗曹滴が、十一世の渓厳曹逸に法界寺を託し、兼務していた恵那郡蛭川村の高徳寺へ転住しました。

境内

法界寺の境内には、本堂の西側に開山御廟塔が建っています。また、苗木藩の廃仏毀釈の際に割られたと思われる石仏が祀られた小堂も存在します。

下野庚申堂

法界寺が管理している下野庚申堂は、鎌倉時代初頭に真言宗の高僧・文覚上人が諸国行脚の際にこの地に立ち寄り、村人の求めに応じて青面金剛童子の像を祀ったのが始まりとされています。三面六臂の顔が猿に似ていることから、神道では猿田彦とされ、病魔や悪鬼を払う神仏として信仰されてきました。現在の堂宇は安永7年（1778年）に建立されたもので、前堂は明治23年（1890年）に再建され、その際、山岡鉄舟の筆による「金剛王」の大額が寄進されました。60年毎の庚申の年には大開帳が行われます。

脚注

参考文献

福岡町史　通史編　下巻　第四節　各寺院とその跡　p966～p968　福岡町　1992年
恵那郡史　第八篇　現代　第四十一章　人文の発展(一)　【各宗寺院】　p612～p619　恵那郡教育会　1926年

関連寺院

雲林寺 (中津川市)
蔵田寺 (中津川市)

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