海士潜女神社

海士潜女神社（あまかづきめじんじゃ）

海士潜女神社は、三重県鳥羽市国崎町に位置する神社です。かつては「海士御前」と呼ばれ、地元では「お弁さん」の名で親しまれてきました。海女の厚い信仰を集め、その安全と豊漁を祈願する場として、今日に至るまで大切にされています。

神社の概要

境内には、木造神明造の本殿と木造流造の拝殿が鎮座し、瑞垣で囲まれています。鳥居と常夜灯が各2基、そして社務所が建ち、静かで落ち着いた雰囲気を醸し出しています。境内は約920坪の広さです。

主祭神

主祭神は潜女神（かづきめのかみ）であり、この神は伝説の海女、お弁とされています。お弁は海女の始祖とも言われ、めまい除けやトモカヅキ（船酔いの一種）よけにご利益があると信じられています。そのため、地元の海女はもちろん、全国のダイバーからも厚い信仰を受けています。

歴史

神社の創建は古く、垂仁天皇26年（紀元前4年）に遡ります。倭姫命が伊勢神宮への御贄地を求めて国崎を訪れた際、海女のお弁がアワビを献上しました。そのアワビの味が格別であったため、伊勢神宮への奉納を命じました。アワビは日持ちするように熨斗（のし）あわびに加工され、奉納されたと伝えられています。その後、国崎は伊勢神宮の神戸（かんべ）に選定されました。外宮旧神楽歌には「ひめ社」として歌われています。

1869年（明治2年）に海士御前から海士潜女神社へと改称されました。明治時代には近隣の神社を合祀し、1908年（明治41年）には専任の禰宜が置かれ、それまで祭祀を司っていた「御祭家」はその役目を終えました。

合祀された神社

海士潜女神社には、以下の17社が合祀されています。これらの神社は、いずれも旧社格が無格社でした。

* 剱宮社

祭事

海士潜女神社では、年間を通じて様々な祭事が行われます。特に有名なのは、八幡祭と二船祭です。これらは国崎町の二大祭礼として、地域住民に親しまれています。

八幡祭

八幡祭は、元は八幡社の祭りで、1月5日に行われる弓射神事が中心です。鳥羽市内の各地で行われる八幡祭と同様に、大漁と海上安全を祈願する意味合いが込められています。1月2日には弓射の打ち合わせとして「初寄り」が行われ、1月4日には戸主が翌日の膳部を準備する「大根かき」が催されます。

真名箸

弓射神事の一環として、真名箸（まなばし）と呼ばれる神事が行われます。これは、国崎の里谷・海間谷の各集落から選ばれた男性が、手を触れずに箸と包丁だけでボラを3枚におろして刺身にするというものです。おろしたボラの各部位は、それぞれ持ち帰る人や振る舞われる人が決まっています。

二船祭

二船祭は、毎年11月に3日間かけて行われる祭事です。元は白鬚大明神社の祭りで、海間谷と里谷の競漕が主な神事となっています。祭りの日程は、以前は11月16日から18日でしたが、現在は11月21日から23日に行われています。

祭りの期間中には、伊勢神宮からお札を授かる「万度迎え」、ヤシャブシの木で大船2隻と小舟48隻を製作する「御船作り」、そしてメインイベントである「競漕神事」が行われます。

競漕神事

競漕神事では、里谷と海間谷の若者たちが船に乗り込み、櫂を使って前浜まで競漕します。この競漕は豊漁を占うもので、里谷が勝てばボラが、海間谷が勝てばイワシが大漁になると伝えられています。かつては「けんか祭り」と称されるほど、応援合戦も激しいものでした。

御潜神事・例大祭

御潜神事（みかずきしんじ）は、かつては近隣の7村から海女が集まりアワビを獲る神事でしたが、一時廃絶されました。その後、復活と中断を経て、現在は国崎の海女のみが参加する祭りとして再興されています。

御潜神事と同日に開催される例大祭では、伊勢神宮から神職や舞姫が訪れ、神楽が奉納されます。また、海女が総出で1年の操業の安全を祈願します。例大祭に合わせて「熨斗あわび祭り」も開催され、賑わいを見せています。

周辺情報

海士潜女神社の周辺は国崎町の中心街であり、鳥羽駅からのバスも利用できます。神社の付近には駐車場はありません。

海女の守り神として、また地域の歴史と文化を伝える場として、海士潜女神社はこれからも大切にされていくことでしょう。

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