海蝕洞

海蝕洞とは

海蝕洞（かいしょくどう）とは、波の侵食作用によって海岸の崖（海食崖）に形成された洞窟のことです。漢字では「海食洞」とも表記されます。 海に面した陸地では、常に波の力が岩を削り、急な崖が形成されます。さらに、岩質が弱い部分では波の侵食が進行し、独特な地形が生まれます。この侵食によってできる地形には、幅よりも奥行きが長い海蝕洞と、奥行きよりも幅が長い波食窪（ノッチ）があります。

海蝕洞の形成

海蝕洞は、波の絶え間ない侵食によって形成されます。特に、岩の弱い部分や割れ目などは、波の力によって深く削られやすく、洞窟のような空間ができます。この侵食過程で、水面近くにできた海蝕洞では、満潮時に洞内の海水と空気が押し出される「潮吹き穴」という現象が見られることがあります。

また、地殻変動によって海蝕洞が沈降すると、海底洞窟となる場合もあります。さらに、海蝕洞が侵食によって貫通し、トンネル状になったものは「海蝕洞門（海食洞門）」と呼ばれます。

海蝕洞の利用

かつて、海蝕洞は人々の居住空間として利用されたこともあります。洞内からは古代の生活跡が発見されることもあり、これらの多くは、隆起によって満潮時の水位よりも高い位置に持ち上げられたものです。

日本と世界の海蝕洞の例

世界には、様々な海蝕洞が存在します。以下に代表的な例を挙げます。

日本の海蝕洞

三陸海岸の海蝕洞群（岩手県）: 複雑な地形が生み出す、多様な海蝕洞が見られます。
大桟橋（秋田県男鹿市）: 男鹿半[[島]]の海岸に位置する海蝕洞です。
七面大天女岩屋（新潟県新潟市西蒲区）: 信仰の対象ともなってきた海蝕洞です。
東滑川町の海蝕洞（茨城県日立市）：海に面した崖に形成された洞窟です。
布良海蝕洞（千葉県館山市）：県の天然記念物にも指定されている貴重な海蝕洞です。
雨崎海蝕洞（神奈川県三浦市）：三浦半[[島]]の南端に位置する海蝕洞です。
岩屋（神奈川県藤沢市江の島）: 江の島にある複数の洞窟の総称で、弁天窟などとも呼ばれます。
玉川海蝕洞（福井県南越前町）: 日本海の荒波によって形成された海蝕洞です。
蘇洞門の海蝕洞群（福井県小浜市）: 国の名勝に指定された美しい海蝕洞群です。
堂ヶ[[島天窓洞]]（静岡県西伊豆町）: 天井に穴が開いた珍しい海蝕洞で、国の天然記念物です。
二見町松下の潜島（三重県伊勢市）: 海の中に一部が沈んでいる海蝕洞です。
熊野灘の鬼ヶ城（三重県熊野市）: 奇岩が連なる海岸に形成された海蝕洞です。
穴文殊（京都府丹後町）: 古くから信仰の対象となっている海蝕洞です。
円月島（和歌[[山県]]西牟婁郡白浜町）: 海蝕によって中央に穴が開いた特徴的な島です。
三段壁洞窟（和歌[[山県]]西牟婁郡白浜町）: 断崖絶壁にある洞窟です。
紀の松島の海蝕洞群（和歌[[山県]]那智勝浦町）: 変化に富んだ地形の海蝕洞群です。
竹野海岸の淀の洞門（兵庫県豊岡市）: 日本海の荒波に削られた海蝕洞門です。
香住海岸の海蝕洞群（兵庫県香美町）: 国の名勝に指定されている美しい海蝕洞群です。
但馬御火浦の海蝕洞群（兵庫県新温[[泉町]]・香美町）: 国の名勝および天然記念物で、様々な形状の海蝕洞が見られます。
諸寄海岸の海蝕洞群（兵庫県新温[[泉町]]）: 東ノ洞門、西ノ洞門などがあります。
居組海岸の海蝕洞群（兵庫県新温[[泉町]]）: 日本洞門や亀山洞門などがあります。
浦富[[海岸]]の海蝕洞群（鳥取県岩美町）: 国の名勝および天然記念物で、変化に富んだ地形が特徴です。
橋津周辺の海蝕洞（鳥取県湯梨浜町）: 砂浜の近くにある海蝕洞です。
加賀の潜戸（島根県松江市）: 海上から洞窟内を観光できる海蝕洞です。
国賀海岸の通天橋（島根県隠岐諸島）: 海蝕によって形成されたアーチ状の岩です。
石見畳ヶ浦の海蝕洞（島根県浜田市）: 海岸に広がる畳のような岩盤にある海蝕洞です。
黄金洞（山口県長門市）: 海蝕によってできた洞窟で、黄金色に輝くといわれます。
観音洞（山口県長門市）: 観音様が祀られているとされる海蝕洞です。
大吼谷蝙蝠洞（山口県下関市）: コウモリが生息する海蝕洞で、国の天然記念物です。
恵比須洞（徳島県美波町）: 恵比須様が祀られているとされる海蝕洞です。
千羽海崖の通り岩（徳島県美波町）: 海蝕によってできた岩のトンネルです。
御厨人窟（高知県室戸市）: 空海が修行したと伝えられる海蝕洞です。
芥屋の大門（福岡県糸島市）: 玄武岩の柱状節理が特徴的な海蝕洞で、国の天然記念物です。
洞山島（福岡県芦屋町）: 島全体が海蝕によって形成された奇岩です。
屋形石の七ツ釜（佐賀県唐津市湊町）: 海蝕によってできた７つの洞窟で、国の天然記念物です。
一号橋下海蝕洞（熊本県宇城市）: 海岸近くの橋の下にある海蝕洞です。
長崎鼻の海蝕洞（大分県豊後高田市）: 県の天然記念物に指定されている海蝕洞です。
日豊[[海岸]]の海蝕洞群（大分県）: 日豊[[海岸]]沿いに見られる海蝕洞群です。
島浦島の鼻熊（宮崎県延岡市）: 海蝕によってできた岩の形状が特徴的です。
鵜戸神宮（宮崎県日南市）: 海蝕洞の中に建てられた珍しい神社です。
フーチャ（鹿児島県和泊町）: 海岸にある巨大な岩穴です。

海外の海蝕洞

サンタクルズ北部の海蝕洞（アメリカ合衆国カリフォルニア州）
青の洞窟（イタリアカンパニア州ナポリ県カプリ[[島]]）
フィンガルの洞窟（イギリススコットランドヘブリディーズ諸[[島]]スタファ島）
ランペドゥーザ島（イタリア）ペラージェ諸[[島]]

海蝕洞の保全

海蝕洞は、自然の力によって形成された貴重な地形です。その保全のため、環境保護に対する意識を高めることが重要です。また、観光地として利用する場合には、適切な管理を行うことで、自然環境への影響を最小限に抑える努力が必要です。

関連項目

ジオパーク：地質学的に重要な場所を保護する取り組み
天然[[橋]]：自然の力によって形成された橋のような地形

外部リンク

日本の典型的地形: 海食洞 - 国土地理院

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