海軍左派

海軍左派について

海軍左派とは、歴史的に見た場合、特にワシントン軍縮条約の締結に関与した派閥の一つで、艦隊派に対抗して条約派を支持した勢力を指します。彼らは日独伊三国同盟の締結や対米開戦に対して明確に反対し、イギリスやアメリカに親和的な立場をとりました。これにより、海軍左派は対米強硬派や親独派に分類される右派と対比され、「左派」と呼ばれることになりましたが、その思想はマルクス主義とは全く関係がありません。むしろ、オールド・リベラリストに近い考え方を持っていました。

この派閥は、海軍の主流派であった加藤友三郎や岡田啓介などの「条約派」の流れをくむものであり、彼らの考え方は当時の日本海軍の価値観に大きな影響を与えました。しかし、ロンドン海軍軍縮会議以降、大角岑生が条約派の主要な提督たちを予備役に編入するという人事を行ったため、この派閥は昭和10年代には次第に力を弱めていきました。

海軍左派の重要なメンバーには、長谷川清や古賀峯一、高木惣吉、実松譲、大井篤、中山定義、内田一臣などが名を連ねています。特に米内光政、山本五十六、井上成美の三人は「海軍左派トリオ」または「海軍三羽烏」として知られ、彼らの存在はこの派閥の象徴的な存在となっています。また、皇族の中では高松宮宣仁親王がこの海軍左派に属していたことも特筆されます。

海軍左派とは名ばかりで、陸軍内の統制派や皇道派に見られるような顕著な派閥志向はあまり見られませんでした。特に、山本五十六と井上成美の二人は、左派に属しつつも航空優先論者であるため、海軍左派とその信念に混乱をもたらしがちです。彼らの存在によって、海軍左派のイメージは複雑になることもありました。

海軍左派は日本の海軍における重要な派閥として、西洋の影響を受けながらも独自の立場を堅持しつつ、様々な国際的な動向に対抗してきました。その歴史を理解することで、当時の日本海軍の思考や態度がどのように形成されたのかを知る手がかりになります。また、彼らの理念や行動がどのように日本の歴史に影響を与えたのかを考えることも興味深い点です。なお、関連するキーワードとしては「艦隊派」や「条約派」があり、これらと組み合わせて理解すると、より深い知識が得られるでしょう。

もう一度検索