清泉寺 (鹿児島市)

清泉寺（せいせんじ）

清泉寺は、かつて鹿児島市下福元町に存在した曹洞宗の寺院です。古記録によると、百済の僧・日羅によって建立されたとされていますが、実在が確認できるのは室町時代以降です。川辺の宝福寺の末寺として覚卍和尚によって再興され、その後、藩主島津氏の庇護を受けました。しかし、明治2年の廃仏毀釈により廃寺となりました。

沿革

清泉寺は、室町時代に川辺の宝福寺の末寺として再興されました。その後、島津氏の庇護を受け、寺領を拡大しましたが、明治時代の廃仏毀釈によって廃寺となり、その歴史に幕を閉じました。現在、跡地には鎌倉時代に掘られたと思われる磨崖仏や多くの石像が散在しており、往時の面影を偲ばせています。また、寺名の由来となった銘水が湧き出ており、現在も鹿児島の特産品である焼酎の原料として利用されています。

文化財

清泉寺には、以下のような文化財がありました。

建長3年銘 阿弥陀如来像（磨崖仏）：鎌倉時代に作られた磨崖仏で、歴史的な価値があります。
島津忠良供養在家菩薩像：島津氏の菩提を弔うために作られた菩薩像です。
* 金剛力士像：寺の守護神として置かれていた力強い像です。

島津久章殺害事件

清泉寺は、島津久章殺害事件の舞台ともなりました。島津久章は、島津氏の分家である新城島津家の当主で、18代当主島津家久の婿でもありました。寛永16年（1639年）に、藩主に就任したばかりの義兄・島津光久の名代として徳川御三家への使者となりました。しかし、帰路、宿泊していた京都から突如失踪し、高野山の島津氏菩提寺「蓮金院」にたどり着いたところを捕縛され、薩摩に護送されました。

その後、久章は川辺宝福寺に幽閉され、後に末寺である清泉寺に移されました。正保5年（1645年）、流刑処分が決まり、藩の護送役人が迎えに来たところで乱闘となり、久章以下家臣全員が死亡しました。久章の遺骸は清泉寺の境内に葬られ、現在も墓石が残っています。

この事件の背景には、島津義久の晩年から浮上していたお家騒動があったとする説が有力です。後の史料では、「島津久章が紀州徳川家を訪問した際に籠から降りなかった無礼を島津光久が聞いて逆鱗に触れたため」と書かれていますが、真相は不明です。

谷山大観音

清泉寺跡の近くには、「谷山大観音」と呼ばれる金色の観音像があります。この観音像がある場所は、かつて「妙円寺谷山出張所」と表記されていましたが、現在は「清泉寺観音堂」となっています。これは、廃寺となった清泉寺の名前が使われていることを示しています。

観音像の入り口近くにある寺務所は「清泉寺寺務所」と表記され、観音像の下にある納骨堂の建物も「清泉寺大観音堂」と表記されています。納骨堂の横には賽銭箱の置かれた祈祷を行う建物があります。入口には、商売繁盛、合格祈願、縁結びのための「ろうそく祈願」の案内や、納骨堂、近場の磨崖仏史跡の案内が書かれた看板が立てられています。かつては、清泉寺の名前が書かれた納骨堂分譲中の旗が立てられていたこともあります。

この観音像は、日置市の妙円寺によって、61代住職・伊藤憲一の代に台湾で製作され、船で運ばれてきました。1990年代初め頃に観音像が先に建立され、後に周囲の建物等が整備されました。現在、この妙円寺が管理しています。33mある観音像の台座より下は納骨堂の建物になっており、納骨堂の正面には8体の白い仏像が設置されています。また、向かって右側面には、妙円寺により分譲された数々の墓や地蔵が並んでいます。

このように、清泉寺は廃寺となりましたが、その名前は現在も地域に残り、人々に親しまれています。

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