源威集

源威集（げんいしゅう）

『源威集』は、南北朝時代後期の14世紀後半に編纂された軍記物の一つであり、主に河内源氏の武家政権の正当性や東国武士の活動を中心に展開する作品です。本作の著者については、結城直光または佐竹師義の二説があります。本書は全2巻から成り立っており、武士の歴史を紐解く貴重な資料となっています。

概要

現存する『源威集』の版本は、元禄年間に秋田藩の藩史編纂の一環として真壁氏幹の末裔である真壁充幹（甚太夫）が藩主佐竹氏に提出したものが唯一のものであり、現在は千秋文庫に所蔵されています。この版本を基にして、東京大学史料編纂所が所蔵する影写本や他の刊行本が編纂されています。

本作は、引退した老将が孫や曾孫からの問いかけに応える形式で、源氏と東国武士の歴史を語ります。物語は、源氏と八幡大菩薩の関係からスタートし、源義光の笛にまつわる伝説や、源義親の梟首、藤原泰衡討伐、源頼朝の2度の上洛、さらには足利尊氏の上洛や東寺合戦といった出来事に焦点を当てています。

内容の特徴

『源威集』は特に、源氏の棟梁と東国武士との強い結びつきに重きを置いて描写しており、保元・平治の乱や治承・寿永の乱（源平合戦）など、東国に関連性の薄い合戦については省略されています。このような構成により、東国武士と源氏の関係がより明確に浮かび上がります。

また、本作には当時の武家間で興隆しつつあった武家故実に関連する記述も多く見られ、武家故実書が編纂される以前の貴重な記録とも評価されています。そのため、歴史研究や武士団の活動を探求する資料としても注目されています。

参考文献

• - 加地宏江校注 『源威集』 （平凡社東洋文庫、1996年）
• - 『梅松論・源威集』 ＜新撰日本古典文庫3＞現代思潮社、1975年
• - 矢代和夫・加美宏校注。現代思潮新社（復刊）、2010年。
• - 加地宏江『中世歴史叙述の展開 「職原鈔」と後期軍記』（吉川弘文館、1999年）
• - 髙橋恵美子『中世結城氏の家伝と軍記』（勉誠出版、2010年）

関連項目

• - 太平記
• - 承久記
• - 増鏡
• - 建武年中行事
• - 神皇正統記
• - 新葉和歌集

この作品は、武士の栄光とその背後にある歴史を理解するための重要な手掛かりを提供するものです。

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