源義広 (志田三郎先生)

源義広：波乱の生涯を辿った河内源氏の武将

源義広は、平安時代末期に活躍した武将です。河内源氏の重鎮、源為義の三男として生まれ、志田三郎先生という通称でも知られています。名は義範、義憲とも呼ばれたようです。

若き日の都と関東への移住

若い頃は京で帯刀舎人という役職に就いていましたが、後に関東へ移り住み、常陸国信太荘（現在の茨城県稲敷市）を開墾、拠点としました。このため、志田三郎先生と呼ばれるようになったのです。義広の周囲には、異母兄の源義朝、同母兄の義賢、そして異母弟たちに、為朝や頼賢、行家といったそうそうたる面々がいました。兄弟間の複雑な関係性は、後の義広の生涯に大きな影響を与えます。

保元・平治の乱：中立の立場か

義広は同母兄の義賢と深い繋がりがあり、義賢とほぼ同時期に関東へ下向しました。仁平3年（1151年）には常陸国に志田荘を創設、この荘園の設立には平頼盛が関わっており、この頃から義広と平氏との繋がりが見え隠れします。しかし、保元元年（1156年）の保元の乱では、義広の動向は不明瞭です。いくつかの史料では為義や為朝と共に崇徳上皇方についたと記されていますが、他の史料ではその名が全く見当たりません。保元3年には河内国長野で活動していたという記録もあり、乱には参加しなかったか、義朝方についたか、中立を保っていた可能性が高いと考えられています。

平治元年（1159年）の平治の乱でも、義広は行家と共に義朝方として参戦したという記述がありますが、具体的な行動は不明であり、他の史料による裏付けもありません。義朝が敗れた後も、義広は信太荘に留まり、平氏の台頭を傍観していました。

源頼朝との複雑な関係：反旗と最期

治承4年（1180年）の以仁王の挙兵では、義広の弟、源行家が頼朝に令旨を伝えた後、義広のもとを訪れたと伝えられています。頼朝挙兵後、義広は行家と共に頼朝に面会したものの、合流はせず、常陸南部で独自の勢力を維持しました。

寿永2年（1183年）、義広は頼朝の鹿島社所領の押領行為に反発し、足利俊綱・忠綱父子と連合、2万の兵を集めて頼朝討伐を目指し下野国へ侵攻しました。しかし、野木宮の戦いで小山朝政らに敗れ、本拠地を失います。その後、義賢の子である木曾義仲に合流し、北陸道を経て上洛、信濃守に任官されました。

元暦元年（1184年）の宇治川の戦いでは義経軍と戦い、粟津の戦いで義仲が討たれると、義広も追討を受ける身となりました。伊勢国羽取山で抵抗を試みましたが、波多野盛通、大井実春、山内首藤経俊、大内惟義の家人らとの戦いで討ち取られました。

後裔と記念

義広の子孫を称する氏族には、志駄氏、梅田氏、楢崎氏、比志島氏、小山田氏などがあります。東京都足立区の明王院は義広が開基したと伝えられています。

まとめ

源義広は、複雑な時代状況の中で、常に変化する勢力図の中で生き抜こうとした武将でした。兄弟や親族との複雑な関係、源頼朝との微妙な駆け引き、そして最終的には木曾義仲への忠誠。彼の生涯は、平安時代末期の動乱を象徴する、ドラマチックな物語となっています。様々な史料の解釈が分かれる部分も多く、更なる研究が待たれる人物と言えるでしょう。

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