源雅定

源雅定：舞楽、笙、和歌に秀でた平安貴族

源雅定（みなもと の まささだ）は、平安時代後期を代表する公卿であり、優れた歌人としても知られています。村上源氏出身で、太政大臣源雅実の次男にあたる彼は、正二位・右大臣にまで昇進し、左近衛大将も務めました。中院右大臣の称号で知られ、久我家二代当主でもあります。

多彩な才能と魅力的な人物像

雅定は、素直で人当たりが良く、堅苦しさのない魅力的な人物であったと伝えられています。学識にも優れ、朝廷の儀式にも精通していたとされ、その才能は多岐に渡ります。幼少期から舞楽に秀でており、9歳の時、白河院50歳の賀の試楽で『胡飲酒』を舞って称賛を浴びました。父・雅実は雅定の舞の才能を高く評価しており、雅定が石清水臨時祭の一の舞に選ばれなかったことに激怒し、途中で帰京したという逸話も残されています。また、雅定は笙の演奏にも長け、豊原時元から笙の演奏を学びました。嘉応2年（1170年）までに開催された御遊では、雅定の笙の演奏回数は記録に残る限り最多で、2位の藤原宗忠を大きく引き離していました。

歌人としての雅定

雅定は歌人としても才能を発揮し、藤原顕輔や源俊頼らと交流を持ちました。『金葉和歌集』をはじめとする勅撰和歌集に多くの歌が採録されています。雅定の歌は、彼の洗練された感性と教養の高さを反映したものであったと推測されます。

『大鏡』増補への関与

古くから、国史の類書である『大鏡』の増補者として、雅定を比定する説が有力視されてきました。この説は、『大鏡』本編の作者と増補者の間に何らかの関係性があるという推測に基づいており、本編作者を村上源氏とする見解を支持する研究者から広く受け入れられています。しかし、藤原氏を本編作者とする研究者からは、皇后宮大夫の経験者である藤原家忠を候補とするなど異論も唱えられており、現在も議論が続いている点です。

華麗なる経歴と晩年

雅定の官歴は輝かしいものでした。12歳で侍従、右少将に叙爵され、その後、順調に昇進を重ね、権中納言、中納言、権大納言を経て、ついに右大臣の地位にまで上り詰めました。左大将、内大臣などの要職も歴任し、朝廷の中枢で活躍しました。仁平4年（1154年）に出家しましたが、久寿2年（1155年）には近衛天皇崩御時の後継者を決める会議に出席しており、朝廷への関与を完全に断ち切ったわけではなかったようです。

系譜と参考文献

雅定の父は源雅実、母については複数の説があり、はっきりとは分かっていません。妻は藤原顕季の娘です。養子に源雅通、猶子に源定房がいます。これらの情報は、国史大辞典などの参考文献を参照しています。

まとめ

源雅定は、舞楽、笙、和歌の才能に優れ、朝廷においても重要な役割を担った人物でした。華麗な経歴と、謎の多い『大鏡』増補への関与は、平安時代後期の歴史を語る上で重要な要素となっています。彼の生涯は、平安貴族の多様な才能と政治的駆け引き、そして文化への貢献を垣間見せる貴重な事例と言えるでしょう。

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