烏丸光胤

烏丸光胤（からすまる みつたね）は、江戸時代に生きた公家であり、徳川斉昭の母方の曾祖父にあたります。表向きは中御門宣顕の次男とされていますが、実際には中御門宣誠の隠し子でした。

生涯

享保16年（1731年）に叙爵を受け、公家としての道を歩み始めます。2年後には伯父である烏丸光栄の養子となり、元服を経て従五位上に叙せられました。その後は、侍従や弁官、蔵人といった役職を歴任し、延享元年（1744年）には従四位上に叙せられ、蔵人頭と右大弁に任じられました。この年に、名を光胤と改めます。

延享3年（1746年）には参議に任じられ、公卿の一員となります。寛延元年（1748年）には正三位権中納言、宝暦6年（1756年）には従二位権大納言へと昇進を重ねました。

桃園天皇の近臣としては、天皇の和歌や書道の学習をサポートする役割を担いました。その一方で、自身も竹内式部に神道や儒学を学んでいました。しかし、竹内式部の学説を巡る朝廷内の対立が激化し、宝暦事件へと発展。宝暦8年（1758年）7月には、官職を停止され、永蟄居という処分を受けました。2年後の宝暦10年（1760年）5月には落飾を命じられ、卜山と号しました。

林大樹の研究によれば、宝暦事件の背景には、竹内式部の門下生を中心とする桃園天皇の近臣と、朝廷の実権を握る摂家との対立がありました。烏丸光胤らは、天皇に実権を取り戻させるための具体的な方策を提案したとされています。この「宮廷クーデター」計画を知った摂家が、桃園天皇に圧力をかけ、処分を強要したというのが事件の真相であると分析されています。

安永7年（1778年）6月に永蟄居を解かれると、後桜町上皇に召し上げられ、歌道の指導役を務めました。しかし、安永9年（1780年）9月に病のため亡くなりました。法号は竜泉院宗亀卜山。太秦の法雲院に葬られています。明治24年（1891年）には、宝暦事件の関係者に対する名誉回復として、従一位が贈られました。

系譜

正室：烏丸光栄の娘
長男：光家
次男：光祖
継室：真如の娘
次女：早世
三男：町資補（光諄） - 広橋勝胤の養子となるも後に離縁、修南院僧都
四男：外山光実 - 外山光任の養子
生母不明
長女：胤子 - 桃園天皇の典侍

参考文献

野島寿三郎 編『公卿人名大事典』（日外アソシエーツ、1994年） ISBN 978-4-8169-1244-3「烏丸光胤」P220-221
* 武部敏夫「烏丸光胤」『国史大辞典 3』（吉川弘文館、1983年） ISBN 978-4-64200-503-6 P653

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