独孤信

独孤信：三王朝の血縁を繋いだ男

独孤信（どっこ しん、502年 - 557年）は、中国の西魏時代に活躍した軍人であり、武川鎮軍閥の重要な人物です。彼の人生は、北周、隋、唐という後の中国を支配する三つの王朝と深く結びついています。独孤信の娘たちは、それぞれの王朝の皇帝や皇帝の母となり、彼の血筋は歴史を大きく動かす力となりました。

美貌と武勇

独孤信は、本名を如願（じょがん）、字を期弥頭（きびとう）といいました。雲中郡の出身で、その容姿は非常に美しく、また騎射に長けていました。北魏末期の混乱期に頭角を現し、衛可孤を討ったことでその名を知られるようになりました。六鎮の乱では、葛栄に捕らえられましたが、その際も派手な服装を好み、「独孤郎」と呼ばれ、一目置かれる存在でした。

軍人としての活躍

爾朱栄が葛栄を破ると、独孤信は爾朱氏に仕え、別将として各地を転戦しました。韓楼討伐では漁陽王袁肆周を捕らえるなど、数々の功績を挙げ、員外散騎侍郎に任ぜられました。その後も驍騎将軍として滏口に駐屯し、元顥との戦いでは先鋒を務め、これを打ち破りました。安南将軍に任ぜられ、爰徳県侯の爵位を受けました。

530年には、荊州新野鎮将・新野郡太守として赴任し、南朝梁との戦いでは下溠戍を攻略、武衛将軍に転じました。賀抜岳が殺害されると、賀抜勝の命で入関し、宇文泰と協力して賀抜岳の残党を掌握しました。孝武帝が長安に入ると、独孤信は父母妻子を捨てて単騎で追随し、その忠誠心を認められ、浮陽郡公に進められました。

荊州が東魏に奪われると、衛大将軍・都督三荊州諸軍事となり、尚書右僕射・東南道行台・大都督・荊州刺史を兼ねました。東魏との戦いでは、寡勢ながらも敵を打ち破り、荊州を奪還するなどの活躍を見せ、車騎大将軍・儀同三司に任ぜられました。

その後、東魏軍の侵攻を受け、南朝梁に亡命しましたが、3年後に西魏に帰還。宇文泰に従って弘農を奪い、沙苑の戦いで東魏軍を破りました。父の死後、喪に服し、大都督として洛陽に入りましたが、東魏軍の包囲を受け、金墉城に拠って奮戦しました。侯景が荊州に侵攻すると、武関から出撃し、三荊州の治安を回復させました。隴右十州大都督・秦州刺史に任ぜられ、各地の反乱を鎮圧するなど、軍人として多大な功績を残しました。

悲劇的な最期

556年に六官が設けられると、大司馬に任ぜられましたが、趙貴事件に連座して免職となり、宇文護に強迫されて自殺しました。55歳でした。隋の建国後、太師・上柱国・冀定相滄瀛趙恒洺貝十州諸軍事・冀州刺史の位を追贈され、趙国公に追封されました。

三王朝との繋がり

独孤信の特筆すべき点は、彼の娘たちが北周、隋、唐という三つの王朝のいずれにも嫁いでいることです。長女は北周の明帝の皇后、四女は唐の高祖李淵の母、そして七女は隋の文帝楊堅の皇后となりました。これにより、独孤信は三王朝の血縁を繋ぐという、他に類を見ない役割を果たしたのです。

独孤信は、その美貌と武勇、そして忠誠心によって、激動の時代を生き抜いた英雄でした。彼の血筋は、後の中国の歴史に大きな影響を与え、彼の名は後世にまで語り継がれています。

妻子

妻
郭氏
崔氏
男子
長男 独孤羅（字は羅仁、楚安郡太守・儀同大将軍）
次男 独孤善（字は伏陀、兗州刺史・河内郡公）
三男 独孤穆（文侯県侯）
四男 独孤蔵（義寧県侯）
五男 独孤順（項城県伯）
六男 独孤陀（建忠県伯）
七男 独孤宗
八男 独孤整（幽州刺史・平郷県侯）
女子
長女 独孤氏（北周の明帝の明敬皇后）
四女 独孤氏（唐の元貞太后、高祖李淵の母）
七女 独孤伽羅（隋の文帝楊堅の文献皇后）

伝記資料

『周書』巻16 列伝第8
『北史』巻61 列伝第49

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