王愆期

王愆期（おう けんき）

王愆期（生没年不詳）は、東晋初期の軍人であり、字を門子（もんし）と称しました。彼は河東郡猗氏県（現在の山西省臨猗県）の出身で、西晋の尚書殿中郎であった王接（おう せつ）の子として生まれました。

生涯

東晋に仕えた王愆期は、平南将軍温嶠（おん きょう）の督護（とくご）に任じられ、その才能を発揮し始めます。

咸和3年（328年）1月、冠軍将軍蘇峻（そ しゅん）が反乱を起こし、首都の建康（現在の南京市）へ迫ると、温嶠は建康防衛のため、王愆期、西陽郡太守鄧嶽（とう がく）、鄱陽郡太守紀睦（き ぼく）を前鋒として派遣しました。王愆期らは直瀆（ちょくとく）まで進軍し、首都防衛の最前線を担いました。

同年4月、温嶠は征西大将軍陶侃（とう かん）に助力を求めるため、王愆期を荊州（けいしゅう）へ派遣します。当初、陶侃は温嶠の要請を断ろうとしましたが、王愆期は「蘇峻は豺狼（さいろう）のような男であり、もしその野望を遂げさせてしまえば、天下は広しといえども、公（陶侃）が安住できる地はなくなるでしょう」と説得し、さらに鎮圧軍の盟主として陶侃を迎えたいという温嶠の言葉を伝えました。王愆期の熱意に心を動かされた陶侃は、軍服を身につけ、息子の葬儀にも参列せずに、昼夜を問わず進軍を開始しました。

咸和4年（329年）12月、右軍将軍郭黙（かく もく）が江州刺史劉胤（りゅう いん）を殺害し、江州を掌握すると、王愆期と譙国内史桓宣（かん せん）を招聘しました。桓宣は招聘を拒否しましたが、王愆期は身の危険を感じ、これに応じました。王愆期は郭黙に平南将軍・江州刺史の地位に就くことを勧め、郭黙もこれを受け入れました。しかしその後、王愆期は事態の混乱を恐れて廬山（ろざん）へと逃亡しました。

その後、陶侃の右司馬（うし ば）に任じられ、陶侃の側近として重用されます。

咸和9年（334年）6月、大将軍陶侃が病状悪化により官職を辞することを決意すると、王愆期に後事を託し、督護の職を加えて文武を統括させました。陶侃は船で去る際、王愆期を振り返り、感謝の意を伝えたとされています。

その後、征西将軍庾亮（ゆ りょう）の司馬に任じられました。

咸康元年（335年）4月、後趙（こうちょう）の征虜将軍石遇（せき ぐう）が7千騎を率いて襄陽（じょうよう）を攻撃すると、庾亮は王愆期と輔国将軍毛宝（もう ほう）を救援に派遣しました。王愆期らは章山（しょうざん）に駐屯し、襄陽を守備する南中郎将桓宣（かん せん）と共に後趙軍を撃退する活躍を見せました。

南蛮校尉（なんばんこうい）・南郡太守（なんぐんたいしゅ）に任じられ、江陵（こうりょう）の守備を 맡았습니다.

建元2年（344年）7月、王愆期は病のため、職務の交代を願い出ました。征西将軍庾翼（ゆ よく）は建威将軍桓宣を鎮南将軍・南郡太守に任じ、王愆期と交代させました。

その後、散騎常侍（さんきじょうじ）に任じられ、辰陽伯（しんようはく）に封じられました。

これ以後の王愆期の事績は、史書には記録されていません。

著書

王愆期は、軍人としての活躍だけでなく、著述家としても名を残しています。

『列女後伝』：父である王接が著述した72名の女性の史伝を、永嘉の乱（えいかのらん）で散逸したものを再編する形で著述しました。
『春秋公羊論』：車騎将軍庾翼の問いに王愆期が答える問答集。全2巻。
『春秋公羊経伝』：『春秋公羊伝』の注釈を行ったもの。全12巻。

脚注

参考文献

『晋書』巻7、巻51、巻63、巻66、巻67、巻73、巻81
* 『資治通鑑』巻94、巻95

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