王粛 (南北朝)

王粛 (おう しゅく)

王粛（464年 - 501年）は、中国南北朝時代の政治家で、字は恭懿（きょうい）。本貫は琅邪郡臨沂県です。

生涯

南朝斉に仕えましたが、後に北魏へ亡命し、その地で重要な役割を果たしました。

南斉での経歴

王粛は王奐（王份の兄）の子として生まれました。南斉の武帝に仕え、著作郎、太子舎人、司徒主簿、秘書丞といった官職を歴任しました。しかし、永明11年（493年）に父と兄弟が処断されたため、北魏へ亡命することとなります。

北魏での活躍

北魏に亡命後、孝文帝に謁見し、南征を勧めました。その才能を認められ、太和18年（494年）には輔国将軍・大将軍長史に任じられました。開陽伯の爵位を授けられることになったものの、固辞して許されています。その後、仮節・行平南将軍として、大将軍劉昶（りゅう ちょう）の下で南朝斉の司州を攻撃し、義陽まで進出して斉軍を破りました。持節・都督豫東豫東郢三州諸軍事・平南将軍・豫州刺史・揚州大中正にも任じられ、太和19年（495年）には、南朝斉の寧州刺史である董巒（とう らん）を捕らえるなど、数々の戦功を挙げました。

太和21年（497年）、孝文帝が自ら沔北へ親征し、南朝斉の雍州を攻撃した際には、王粛も従軍し、裴叔業（はい しゅくぎょう）を破る手柄を立てました。この功績により、鎮南将軍・都督豫南兗東荊東豫四州諸軍事となり、汝陽県開国子に封じられました。太和22年（498年）には、孝文帝が淮北に侵攻した際、義陽を攻撃しています。南朝斉の裴叔業が渦陽を包囲し、救援に向かった広陵王元羽や劉藻らが裴叔業に敗れるという事態が発生しましたが、王粛は自ら志願して渦陽救援に向かい、裴叔業を撤退させました。ただし、劉藻らの敗戦の責任を問われ、平南将軍に降格されています。

太和23年（499年）に孝文帝が崩御すると、遺詔により王粛は尚書令となり、咸陽王元禧（げんき）らと共に宣武帝（せんぶてい）の宰相を務めることになりました。王粛は宣武帝のいる魯陽に召し出され、共に洛陽へ帰還しました。

景明元年（500年）に裴叔業が寿春で北魏に帰順すると、王粛は使持節・都督江西諸軍事・車騎将軍となり、彭城王元勰（げんきょう）と共に10万の兵を率いて応接にあたりました。南朝斉の豫州刺史である蕭懿（しょう い）が3万の兵を率いて小峴に駐屯し、交州刺史の李叔献が合肥に駐屯して寿春の奪回を図ったため、王粛は蕭懿の部将である胡松・李居士らが率いる1万人余りの軍を死虎で破り、さらに合肥に進んで李叔献を生け捕りにし、蕭懿を小峴から退却させるという目覚ましい戦果を挙げました。洛陽に帰還後、開府儀同三司の位を受け、昌国県開国侯に封じられ、まもなく散騎常侍・都督淮南諸軍事・揚州刺史に任じられました。

景明2年（501年）に寿春で亡くなりました。享年は38歳。侍中・司空公の位を追贈され、諡は宣簡（せんかん）とされました。

家族

妻
陳郡謝氏（先妻、謝荘の娘、王紹と二女をもうけた）
彭城公主（後妻、献文帝の六女、先夫の劉承緒（劉昶の子）が早逝したため、王粛に再嫁した）
男子
王紹（字は三帰、太子洗馬・員外常侍・中書侍郎）
王理（東魏の武定末年に著作佐郎）
女子
王普賢（宣武帝の後宮に入って夫人となった）
王氏（広陽王元淵の妻）

伝記資料

『魏書』巻63 列伝第51
* 『北史』巻42 列伝第30

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