王鎮之

王鎮之（おう ちんし）

王鎮之（357年 - 422年）は、東晋から南朝宋にかけての官僚であり、字は伯重、本貫は琅邪郡臨沂県です。弟に王弘之がいます。

生涯

王鎮之は、上虞県令の王随之（王廙の子の王耆之の子）の子として生まれました。当初は琅邪王衛軍行参軍を務めました。その後、剡県県令や上虞県令といった地方官を歴任し、その有能さで知られるようになりました。琅邪国内史の謝輶に請われて山陰県令となり、ここでも優れた実績を挙げました。

その後、衛軍参軍に転じ、琅邪国郎中令となり、寧朔将軍の号を加えられました。元興元年（402年）に桓玄が政権を掌握すると、鎮之はその下で大将軍録事参軍となりました。当時、三呉の地が飢饉に見舞われ荒廃すると、鎮之は民衆救済の任を命じられました。会稽国内史の王愉が命令に従わなかった際には、王愉を糾弾する上奏を行いました。王愉の子の王綏は桓玄の外甥であり勢力を誇っていましたが、鎮之は圧力を受けました。そのため、老母を養うことを理由に安成郡太守への転任を願い出て、認められました。

元興3年（404年）に桓玄が敗れると、桓玄の部将であった苻宏が郡境を侵犯したため、鎮之はこれに抗戦しましたが、この戦いで5人の子弟を失いました。母の死により辞職し、上虞県の旧墓に母を葬り喪に服しました。子の王標之が安復県令となったため、その赴任に同行しました。喪が明けると、劉道規の下で征西司馬・南平郡太守を歴任しました。義熙6年（410年）には、徐道覆が江陵に迫ったため、鎮之は建威将軍の号を加えられ、檀道済や到彦之らを率いて徐道覆を討伐しました。この功績により華容県五等男に封じられ、廷尉として召還されました。将作大匠を兼ねて、晋の穆帝の何皇后の山陵整備を担当しました。その後、御史中丞に転じ、官僚たちの不正を糾弾したため、人々から恐れられました。

その後、使持節・都督交広二州諸軍事・建威将軍・平越中郎将・広州刺史として地方へ赴任しました。劉裕は鎮之を、清廉な官吏として呉隠之に次ぐ存在と評価し、嶺南の安定を期待しました。劉裕が相国府を建てると、鎮之はその下で相国諮議参軍となり、録事を兼ねました。その後、宋台祠部尚書となりました。

永初元年（420年）に劉裕が皇帝として即位すると、鎮之は脚の病を理由に引退を申し出て、輔国将軍・琅邪郡太守となり、宣訓衛尉に転じ、徐州大中正を兼ねました。

永初3年（422年）、在官のまま死去しました。享年66歳でした。

人物

王鎮之は、地方官として優れた手腕を発揮し、民政に尽力しました。桓玄の政権下での混乱期を経て、南朝宋の成立に貢献し、劉裕から厚い信頼を受けました。清廉な人柄で知られ、その清廉さは呉隠之に次ぐと評価されました。

伝記資料

『宋書』巻92 列伝第52
『南史』巻24 列伝第14

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