田尻但馬

田尻但馬（たじり たじま）

田尻但馬は、戦国時代から安土桃山時代にかけての薩摩国（現在の鹿児島県）の人物です。生没年は不明ですが、文禄元年（1592年）に亡くなりました。元は伊作田尻村の百姓でしたが、その後の活躍により島津氏の家臣となりました。通称は荒兵衛といい、武勇に優れた人物として知られています。妻は新納康久の娘で、子には田尻荒太郎と田尻荒五郎がいます。

生涯

『本藩人物誌』には「武勇抜群の者」と記されており、その武勇は当時から高く評価されていたことが伺えます。

但馬が武士に取り立てられるきっかけとなったのは、天文8年（1539年）の加世田城攻めです。当時、島津忠良は加世田城の攻略に苦戦していました。そこで、新納康久は但馬に対し、「加世田城に火を放ち焼き落とせば、娘を娶らせて武士に取り立てる」と約束しました。この申し出を受け入れた但馬は、見事に加世田城を焼き落とし、約束通り康久の娘を妻に迎え、武士の身分となりました。

武士となった後も、但馬は数々の戦で活躍しました。天文17年（1548年）には、伊集院忠朗による大隅国日当山の北原氏攻めに際して先陣を切り、敵を5、6人討ち取るという武功をあげました。また、同年9月には本田薫親の姫木城攻めでも先陣を任され、火を放って城を落とす一助となりました。天正10年（1582年）には、肥前国の田尻鑑種が龍造寺隆信に対して謀反を起こした際、島津義弘の命により、帖佐宗光・谷口宮内左衛門らと共に田尻氏の城に入り、数ヶ月の間、その守りを固めました。

しかし、その後の文禄元年（1592年）、梅北国兼が梅北一揆を起こすと、但馬は二人の息子と共にこれに加担し、最終的に息子たちと共に討ち死にしました。彼の所領は、その後、能役者である一王雅楽助に与えられました。

田尻但馬は、百姓から武士へと身を立て、武勇を誇った人物ですが、最後は一揆に加担し、悲劇的な最期を遂げました。その生涯は、激動の戦国時代を生き抜いた一人の男の姿を今に伝えています。

参考文献

『本藩人物誌』 鹿児島県史料集（13）（鹿児島県史料刊行委員会）
『「さつま」歴史人名集』（高城書房出版　1991年）ISBN 4-924752-28-2

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