田沼意誠

田沼意誠（たぬま おきのぶ）

田沼意誠は、1721年（享保6年）に生まれ、1774年1月30日（安永2年12月19日）に没した江戸時代中期の幕臣（旗本）です。田沼意行の次男であり、田沼意次の弟にあたります。妻は一橋家家老である伊丹直賢の孫で、子には同じく一橋家家老から幕府御側御用取次まで昇進した意致や、石谷清定の養子となった石谷清豊がいます。

来歴

父・意行は徳川吉宗の側衆であり、意誠は吉宗が幕政を主導するために登用した紀州系幕臣の第2世代にあたります。1732年（享保17年）に徳川宗尹の小姓となり、1736年（元文元年）には200俵取りとして一橋家に仕え、以降死去までその職を務めました。1746年（延享3年）には一橋家附切となり、1759年（宝暦9年）には知行500石、2月9日には一橋家の家老に昇進し、従五位下・能登守に叙任されました。1770年（明和7年）には300石を加増され、800石の旗本となっています。意誠が長く務めた一橋家家老職は、1779年（安永7年）7月28日に子の意致が目付から就任しています。

田沼意誠は、田沼時代に権勢を誇った田沼意次の弟であったことから、自身も一橋家において重要な役割を果たしました。意誠と子の意致はともに一橋家家老を歴任し、その影響力は大きく、諸大名との関係構築にも貢献しました。例えば、薩摩藩が1762年（宝暦12年）2月に焼失した江戸上屋敷再建のために幕府からの拝借金を得ようとした際には、意誠を通じて一橋家へ働きかけを行っています。また、仙台藩の伊達重村が中将への昇進工作を行った際には、1765年（明和2年）6月30日に重村の側役である古田良智が田沼意次の用人・井上寛司に面会する際に、意誠が仲介を依頼されています。さらに、1770年（明和7年）に福井藩に対して大坂の大名貸し商人15軒から貸付が行われた件（目標の3万両は未達成）においては、大坂町奉行所の強い斡旋がありましたが、これは福井藩が一橋家へ働きかけを行った結果であり、意次に通じる弟・意誠のパイプが利用されたと考えられています。

このように、田沼意誠は一橋家家老として、また田沼意次の弟として、幕政や諸大名との関係において重要な役割を担った人物です。

関連項目

* 田沼時代

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