畠山持国

畠山持国：室町時代の守護大名、波乱の生涯

畠山持国は、室町時代に活躍した守護大名であり、室町幕府の管領も務めた人物です。畠山氏は足利氏一門の名門で、持国は畠山満家の嫡男として生まれました。持国は、その生涯において、室町幕府の中枢で活躍し、一時は勢力を拡大しましたが、晩年にはお家騒動を引き起こし、畠山氏衰退のきっかけを作りました。

生涯

隠居からの復活

応永5年（1398年）、畠山満家の嫡男として生まれた持国は、第4代将軍足利義持から偏諱を受け、「持国」と名乗りました。父・満家と同様に幕府に出仕し、正長2年（1429年）には、第6代将軍足利義教の元服式で父の代わりを務めました。永享5年（1433年）に父が亡くなると、家督を相続し、幕府の重臣として会議に参加するようになります。

永享4年（1432年）には大和永享の乱に出兵し、永享6年（1434年）には、義教が延暦寺を包囲した際に、両者を和睦させるなど、その手腕を発揮しました。翌永享7年（1435年）には、再び大和に出陣し、大和宇智郡の守護に任命されました。

三管領の一角を占める畠山氏は、幕政の中核を担い、将軍家にとって目の上のたんこぶのような存在でした。特に第6代将軍足利義教は、畠山氏をはじめとする有力守護大名への干渉を強め、嘉吉元年（1441年）には、持国は結城合戦への出陣を拒否したため、家督を弟の持永に譲らされ、隠居を余儀なくされます。

しかし、同年、義教を恐れた赤松満祐が義教を殺害する事件（嘉吉の変）が勃発すると、持国はただちに挙兵し、持永を討って家督を奪回しました。嘉吉の土一揆の鎮圧では、管領の細川持之と対立しますが、その後、持之が管領を辞任すると、持国が管領に就任、出家して徳本入道と名乗ります。翌年には、満祐が擁立していた足利義尊を討伐し、嘉吉3年（1443年）には、足利義政を第8代将軍に擁立する運動をしました。嘉吉4年（1444年）には、嘉吉の乱の功労者である山名宗全を懐柔するため、赤松満政の所領を宗全に与えるなど、政治手腕を発揮しました。

細川持之の死後は、その遺児である細川勝元と交互に管領を務めることになります。

細川氏との勢力争い

持国は、義教によって家督を追われた人々を復権させ、同時に自らの勢力拡大を図りました。しかし、これに細川氏が対抗し、各地で大名のお家騒動を誘発させます。

信濃守護の小笠原氏では、当主の小笠原宗康と従兄弟の小笠原持長が対立、持国は持長を、細川氏は光康を支持しました。加賀でもお家騒動が発生し、持国は富樫教家を支持しましたが、細川氏に支援された泰高が優勢となり、最終的には加賀を南北に分割することで決着しました。近江では、六角氏の内紛に武力介入しませんでしたが、勝元が管領になると、幕府は時綱一派を壊滅させました。大和では、没落した越智家栄を復帰させ、経覚に大和の支配権を与えましたが、細川氏の支援を受けた光宣が反撃し、最終的には和睦しました。

また、関東では、鎌倉公方に復帰した足利成氏に好意的な対応を取りました。しかし、山城では荘園横領や課税を行い、興福寺や山城国人と対立しました。

お家騒動と晩年

将軍義政は、乳母の今参局を通じて、尾張守護代の織田郷広の復帰を図ります。持国は当初反対しましたが、最終的には義政の提案を受け入れました。これは、義政が畠山氏を抱き込み、守護に対抗しようとしたためとされています。

持国には嫡出の男子がいなかったため、当初は弟の持富を後継者にしていましたが、文安5年（1448年）に庶子の義夏（後の義就）を後継者にします。しかし、家臣団の一部が反対し、甥の弥三郎（政久）を擁立し、家臣団は弥三郎派と義就派に分裂します。享徳3年（1454年）には、義就派が弥三郎派の屋敷を襲撃する事件が発生し、内紛が激化します。当初は義就派が優勢でしたが、細川勝元と山名宗全が弥三郎派を支援し、義就は失踪します。持国は隠居しますが、義政の介入で義就が復権し、家督を継承します。翌享徳4年（1455年）に持国は亡くなります。

死後

持国と細川氏の対立は、各大名家でお家騒動を頻発させ、畠山氏自身も内紛を引き起こし、応仁の乱の遠因となりました。大和でも国人が二派に分かれて激突し、争いが続きました。関東では、幕府の厳しい対応に危機感を抱いた成氏が、関東管領上杉憲忠を殺害し、享徳の乱が勃発しました。

偏諱を与えた人物

神保国宗：家臣・守護代。弥三郎政久を推しましたが、義就派に討たれました。
遊佐国助：家臣・守護代。義就を推して活動しましたが、政長軍に討たれました。

まとめ

畠山持国は、室町幕府の中枢で活躍した守護大名でしたが、晩年にはお家騒動を引き起こし、畠山氏の衰退を招きました。彼の生涯は、当時の社会情勢や権力闘争を色濃く反映しており、室町時代の歴史を理解する上で重要な人物の一人と言えるでしょう。

参考文献

桜井英治『室町人の精神』講談社〈日本の歴史12〉、2001年。
川岡勉『室町幕府と守護権力』吉川弘文館、2002年。
石田晴男『応仁・文明の乱』吉川弘文館〈戦争の日本史9〉、2008年。

関連項目

文安の麹騒動
* 加賀両流文安騒動

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