越智家栄

越智家栄

越智家栄（おち いえひで）は、室町時代中期から戦国時代にかけての大和国（現在の奈良県）の武将です。高取城を拠点とし、大和国内の勢力争いで重要な役割を果たしました。官位は弾正忠、伊賀守、修理大夫、刑部少輔を歴任しています。

生涯

越智家栄は、大和国の国人である越智氏の一族、越智維通（家経とも）の子として生まれました。幼名は春童丸といいます。永享11年（1439年）、父・維通は大和永享の乱で幕府に討たれました。幼少だった家栄に代わり楢原氏が越智氏を継承しますが、嘉吉元年（1441年）に家栄は楢原氏を破り、越智氏の当主となります。この背景には、嘉吉の乱で復権した河内国守護の畠山持国の後押しがありました。

筒井氏との合戦

家督を継いだ家栄は、筒井氏との間で激しい戦いを繰り広げました。嘉吉元年（1441年）、筒井氏の内紛に乗じて筒井順弘を支援し、筒井城を奪還させます。しかし、嘉吉3年（1443年）に順弘が殺害されると、大乗院門跡経覚らと組んで筒井氏を圧迫し、大和国は経覚派の支配下となりました。文安2年（1445年）に筒井氏が反撃に出ると、一進一退の攻防が続きましたが、享徳2年（1453年）に両派は和解しました。

長禄2年（1458年）には、赤松氏遺臣による後南朝襲撃（長禄の変）に協力しています。

大和制圧

康正元年（1455年）に畠山持国が亡くなると、畠山氏で家督争いが発生し、大和国人も二つに分かれました。家栄は畠山義就につき、筒井氏は畠山政長につきました。寛正元年（1460年）に義就が没落すると、家栄は嶽山城に籠城した義就を攻めますが、文正元年（1466年）に義就が再び勢力を盛り返すと、家栄も呼応して筒井氏に勝利し、筒井氏と和睦しました。応仁の乱では、家栄は義就派として筒井氏と戦いました。

文明9年（1477年）に義就が河内国を制圧すると、家栄ら義就派も大和国を占拠し、筒井氏らを追放しました。その後は筒井氏のゲリラに苦しめられつつも、勢力拡大に努めました。文明10年（1478年）には、古市澄胤に娘を嫁がせています。義就が支持していた足利義視の西幕府では、家栄を高く評価して和泉守護に任じましたが、西幕府が解散したため実現しませんでした。

延徳2年（1490年）に義就が死去した後も、家栄は子の基家（義豊）に仕えました。明応2年（1493年）に畠山政長が足利義稙を擁して大和に攻め込むと、基家は細川政元と連携して政長を破り、窮地を脱しました。これに伴い、家栄と澄胤は上洛しています。

晩年

しかし、畠山政長の遺児・尚順が筒井氏と共に反撃に出ると、明応6年（1497年）に家栄は十市氏に敗れて子の家令と共に吉野に没落しました。翌年には高取城に帰還し、勢力を回復しましたが、その2年後に死去しました。

世阿弥の孫である観世十郎大夫を保護し、越智観世を始めたと伝えられています。

参考文献

朝倉弘『奈良県史11 大和武士』（1993年、名著出版）
山本大・小和田哲男編『戦国大名系譜人名事典 西国編』（1986年、新人物往来社）
* 『地方別日本の名族 8 近畿編』（1989年、新人物往来社）

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