異邦人 -シルクロードのテーマ-

楽曲概要

「異邦人 -シルクロードのテーマ-」は、久保田早紀（現・久米小百合）が1979年10月1日にリリースしたデビューシングルであり、表題曲です。カップリングには「夢飛行」が収録されています。この曲は三洋電機のカラーテレビ「くっきりタテ7」のCMソングとして使用され、後に同社の太陽光発電システム「ソーラーアーク」のCMにも再利用されました。

制作背景

この曲の原型は「白い朝」というタイトルでしたが、プロデューサーの酒井政利によって「イメージが伝わりにくい」「インパクトが弱い」と判断され、「異邦人」に変更されました。タイトル候補には「ストレンジャー」「旅人」「エトランゼ」などがありましたが、最終的に「異邦人」に決定しました。しかし、久保田本人はこのタイトルを気に入らなかったと語っています。歌詞についても、シルクロードをテーマに合わせて何度も書き直しが行われました。

この曲は元々、国鉄国立駅前の大学通りの景色をイメージして書かれたもので、歌詞の冒頭「子供たちが空に向かい 両手を広げ …」は、久保田が通学中に国鉄中央線から見えた、国立駅近くの空き地で遊ぶ子供たちの姿を捉えたものです。久保田自身も、この曲がこれほどヒットするとは予想していなかったと語っています。発売後半年間はヒットに戸惑い、まるで「平坦な更地にいきなり10階建のビルが建った」ような感覚だったそうです。

編曲は萩田光雄が担当しました。プロデューサーの酒井は、電通の藤岡和賀夫の企画により、池田満寿夫、阿久悠、横尾忠則、浅井慎平ら8名のクリエイターと南太平洋を旅し、その経験から異国情緒をテーマにした曲を制作していました。同時期にジュディ・オングの「魅せられて」がエーゲ海を題材にしたこともあり、この曲のCM起用に際してシルクロードが選ばれました。民族楽器のダルシマーが使用され、中東風のイントロが異国情緒を醸し出しています。

シングルでは、久保田ではなく羽田健太郎がピアノを演奏しています。また、アルバム『サウダーデ』には、ポルトガルで録音されたバージョンが収録されています。レコードジャケットの写真は、吉祥寺のライブハウス「サムタイム」で撮影されました。ブルボンから発売された食玩CD『J'sポップスの巨人たち』にも、久保田早紀の代表曲として「オレンジ・エアメール・スペシャル」と共に収録されています。2005年には、NHKの「スキウタ〜紅白みんなでアンケート〜」で紅組38位にランクインしました。

コマーシャル採用とプロモーション

三洋電機の「くっきりタテ7」のCMソングの候補として、井上陽水、大橋純子、そして当時デビュー前の久保田小百合の3名が挙げられ、三洋電機の意向で久保田に決定しました。候補曲として「白い朝」と「絹の道」の2曲が提出され、三洋電機の宣伝部長や電通は「絹の道」を推しましたが、営業本部の亀山太一の判断により「白い朝」（後の「異邦人」）が採用されました。亀山は、曲の終わりのフレーズ「ちょっとふり向いてみただけの 異邦人」をキャンペーン・ワーズにするよう指示しました。

三洋電機は、ポスター、カタログ、屋外広告、パッケージに歌詞とシルクロードのシーンを掲載し、CM放送前から社内や販売店でテープを流し、放送後は葉書でリクエストを募るなど、大々的なプロモーションを展開しました。1979年10月1日にレコードが発売され、同年10月14日からテレビCMの放送が開始されました。同年11月19日には、フジテレビの『夜のヒットスタジオ』に初出演しました。

チャート成績

当初からCMでサビが使用され、徐々に売り上げを伸ばしました。1979年11月12日にオリコンチャートで55位に初登場し、同年12月10日には1位を獲得しました。『ザ・ベストテン』には同年12月13日に5位で初登場し、久保田の美しい容姿も注目を集めました。同年12月27日には1位を獲得し、1980年1月17日まで3週連続（実質4週）1位を維持、同年3月6日まで12週連続ランクインしました。1979年12月25日までに、レコード売上が100万枚を突破しました。

亀山太一とプロデューサーの酒井政利は、ヒットの時期を1980年2月末頃と予想していましたが、予想を上回る大ヒットとなりました。オリコンの記録では、シングルの総売上枚数は144.4万枚とされています。

カバー

「異邦人」は、多くのアーティストによってカバーされています。

TAK MATSUMOTO featuring ZARD によるカバー

2003年にギタリストの松本孝弘（B'z）がカバーし、ボーカルに坂井泉水（ZARD）を起用しました。このカバーは、フジテレビ系ドラマ『あなたの隣に誰かいる』の挿入歌として使用されました。ミュージックビデオも制作され、坂井の追悼ライブで公開された後、映像作品化されました。カップリングには荒井由実（現松任谷由実）のカバー「雨の街を」が収録され、ボーカルは松田明子が担当しました。この2曲はアルバム『THE HIT PARADE』にも収録されましたが、「異邦人」はリミックスバージョンでした。

その他のカバー

1980年代以降、様々なアーティストがこの曲をカバーしています。以下に主なカバー例を挙げます。

1980年：ポーラ・チョイ（広東語）、笠原弘子
1991年：かとうれいこ
1997年：野上ゆかな
1998年：艾敬（北京語）
2000年：Coo:nya
2001年：MAGUMI
2002年：中森明菜
2003年：石井竜也、保田圭、小柳ゆき
2005年：女子十二楽坊、徳永英明
2006年：久嶋美さち、チキンガーリックステーキ
2007年：Acid Black Cherry|Acid_Black_Cherry
2008年：安蘭けい
2010年：稲垣潤一（荻野目洋子とのデュエット）
2011年：ミゲル、岩崎良美、蘭華
2012年：柴田淳
2013年：EGO-WRAPPIN'
2014年：華風月、岩佐美咲
2015年：PENICILLIN、吉井和哉
2016年：原田知世、森恵、渥美二郎
2017年：市川由紀乃
2019年：What's Love?、デラックス×デラックス、桑田佳祐
2020年：Ms.OOJA、宮本浩次、上白石萌音、半﨑美子
2021年：雨宮天、中澤卓也
2023年：The Biscats、JUJU

この楽曲は、時代を超えて多くのアーティストに愛され、様々なアレンジで歌い継がれています。

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