白根斐夫

白根斐夫：卓越した技量と冷静さで戦い抜いたエースパイロット

白根斐夫（しらね あやお）は、1916年8月7日に東京で生まれ、1944年11月24日に戦死した大日本帝国海軍の軍人です。彼は、第二次世界大戦中に戦闘機搭乗員として活躍し、その卓越した操縦技術と冷静な判断力で、数々の戦果を挙げたエースパイロットとして知られています。最終階級は戦死による一階級特進で海軍中佐。

生い立ちと海軍入隊

白根斐夫は、内閣書記官長を務めた白根竹介の四男として生まれました。東京府立四中を経て、1937年3月に海軍兵学校第64期を卒業。同期には、真珠湾攻撃に参加した阿部善次や、「特攻に反対した指揮官」として知られる美濃部正らがいます。

1938年7月に第31期飛行学生を修了し、戦闘機搭乗員としての道を歩み始めました。

日中戦争での初陣

1939年9月、白根は第十二航空隊に配属され、漢口に進出しました。1940年8月19日には、新型機である零式艦上戦闘機による重慶爆撃に参加。同年9月13日には、進藤三郎大尉が指揮する零戦隊の一員として、3度目の重慶爆撃に参加しました。

この空戦で、日本軍は敵機27機を撃墜（中国側の記録では撃墜13機、被撃破11機）し、味方機の損害は皆無という完全勝利を収めました。白根中尉もこの戦いで初撃墜を記録しましたが、機銃の故障により撃墜数は1機にとどまりました。

1941年5月、白根は海軍大尉に進級しました。

太平洋戦争での活躍

太平洋戦争開戦後、白根は空母「赤城」の分隊長として、ダーウィン空襲、セイロン沖海戦、ミッドウェー海戦に参加しました。ミッドウェー海戦で空母「赤城」が失われた後は、空母「瑞鶴」の分隊長に転任し、第二次ソロモン海戦、南太平洋海戦を戦い抜きました。

1943年11月、横須賀海軍航空隊に配属され、新型機「紫電」で編成された第三四一海軍航空隊の飛行隊長に就任。1944年10月には海軍少佐に進級しました。

同月末、白根は自ら錬成した「紫電」部隊（戦闘第701飛行隊）を率いて、ルソン島マルコットに進出。レイテ航空戦に参加しましたが、11月24日、オルモック湾上空で米空軍の「P-38」と交戦し、被弾、自爆戦死しました。享年28歳。

戦死後、海軍少佐から一階級特進し、海軍中佐に任ぜられました。

人物像

白根斐夫は、沈着冷静で寡黙な人物だったと伝えられています。卓越した操縦技術に加え、冷静な判断力と責任感の強さから、上官や部下からの信頼も厚い、優れた戦闘機指揮官でした。

参考文献

* 改訂版：秦郁彦、伊沢保穂『日本海軍戦闘機隊〈2〉エース列伝』大日本絵画、2011年。ISBN 978-4-499-23045-2。

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