百里ヶ岳

百里ヶ岳：近江と若狭の境にそびえる山

百里ヶ岳は、滋賀県高島市と福井県小浜市の境に位置する標高931.3mの山です。古くから近江国と若狭国の国境として知られ、その歴史と豊かな自然が魅力です。山頂からは、天気が良ければ百里に及ぶ眺望が広がることから、この名が付けられたと伝えられています。

山容と地理

百里ヶ岳を含む国境尾根は中央分水嶺に属しており、日本海側には北川水系遠敷川、琵琶湖側には淀川水系安曇川の支流が流れ込んでいます。小浜市最高峰であり、山頂には一等三角点が設置されています。小浜市側からは多田ヶ岳によって山頂部は視界から遮られており、若狭幹線林道や多田ヶ岳からのみその雄姿を望むことができますが、滋賀県側からは雄大な山容を堪能できます。

標高600～800mの山地は深い渓谷を形成し、中生層を主とする地質で、頁岩や緑色片岩、チャートなどが地層を構成しています。山麓の福井県小浜市上根来地域は、林野庁により「上根来水源の森」として水源の森百選に選定されているなど、豊かな自然に恵まれた地域です。

歴史と文化

百里ヶ岳の南側には、古くから若狭越えの重要な峠道として知られる根来坂があります。この峠道は、戦国時代の金ヶ崎の戦いにおいて、織田信長軍の退却路として、また、その後は若狭の魚を京都へ運ぶ鯖街道の一部として利用されてきました。山頂の北側には木地山峠があり、滋賀県側の麓にはかつて轆轤村と呼ばれる木地師の集落が存在しました。現在も、小浜市上根来から滋賀県高島市小入谷に至る林道が整備され、根来坂周辺を巡るドライブも可能です。毎年秋には、早朝に雲海が出現し、紅葉と相まって絶景が広がります。

登山と自然

百里ヶ岳は、関西百名山の一つであり、高島トレイルのコースにもなっています。登山ルートはいくつかあり、高島トレイルを利用して三国岳や若狭駒ヶ岳への縦走も可能です。福井県側からは木地山峠を経由するルート、滋賀県側からは百里新道が整備されています。一般的には、林道で根来峠まで車で行き、根来坂から山頂へ往復するコースが人気です。

山頂付近には、数十ヘクタールにわたる原生的なブナ林が広がり、イヌワシやニホンカモシカなどの希少な動植物が生息しています。この地域は県の鳥獣保護区にも指定されています。また、北側の山腹にはホンシャクナゲの群落があり、こちらも県の天然記念物に指定されています。多様な植生は、豊かな自然環境を示しています。

周辺の山々

百里ヶ岳周辺には、若狭駒ヶ岳、三国岳、八ヶ峰、武奈ヶ嶽、三重嶽などの山々が連なり、それぞれの山々からも素晴らしい眺望が楽しめます。これらの山々と百里ヶ岳は、近江と若狭、そして丹波の歴史と自然を繋ぐ重要な位置を占めています。

まとめ

歴史と自然が織りなす魅力あふれる百里ヶ岳は、登山やハイキング、自然観察など、多様な楽しみ方ができる山です。近江と若狭の文化に触れながら、雄大な自然を満喫できる貴重な場所と言えるでしょう。

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