県犬養広刀自

県犬養広刀自

県犬養広刀自（あがたいぬかい の ひろとじ）は、奈良時代中期に活躍した著名な女性で、聖武天皇の正三位の妃として知られています。彼女は、おそらく724年から762年にかけて生きていました。その生涯は多くの課題や悲劇に満ちており、特に彼女の子供たちの運命が悲劇的であったことが彼女自身の人生と密接に関係しています。

家系と出自

県犬養広刀自は、県犬養宿禰を父に持つ県犬養氏出身であり、彼女の父である県犬養唐は、中堅の氏族の一員でした。広刀自の母については記録が残っておらず不明です。彼女の家系は、藤原不比等の妻であり、元明天皇に仕えていた県犬養三千代がいることで知られています。広刀自自身は、聖武天皇の皇太子首と結婚し、安積親王、井上内親王、不破内親王の一男二女をもうけました。安積親王は聖武天皇にとって唯一の男子であり、彼の存在は皇位継承にも大きな影響を与えました。

聖武天皇との関係

広刀自が聖武天皇の妃となった時期については、詳細な記録はありませんが、『続日本紀』によれば、彼女が聖武天皇の妻になったのは神亀5年（728年）以前であると考えられています。聖武天皇には他に安宿媛（光明皇后）がいて、彼女との間に生まれた基親王は、生後異常の病に苦しみ早くに亡くなりました。このため、広刀自の安積親王が注目されるようになりましたが、安積親王も若くして亡くなってしまう運命にありました。

最後の日々

広刀自は天平宝字5年（761年）に、近江国保良宮への行幸の際、4万束の稲を賜りましたが、翌年には安積親王の死去もあって、彼女自身も天平宝字6年（762年）10月14日に亡くなりました。彼女の死後、朝廷からは絁100疋、糸300絇、布300端、米90石が送られたことが記されています。この賛物は、当時の相場から見ると異例のものであり、特別な待遇が与えられたことが伺えます。

織なった運命

広刀自が生んだ子女たち、特に長女の井上内親王は光仁天皇の皇后となりましたが、最終的には廃后となり不自然な死を遂げたことで、その運命が悲劇的であることが際立ちます。広刀自の子女たちが辿ることになった道は、彼女自身の生涯と同様に波乱万丈であり、多くの困難に直面しました。

官歴と評価

彼女の官歴には、正五位下から始まり、聖武天皇の夫人として従三位、最終的には正三位に昇進したことが記されています。彼女はその地位を通じて、奈良時代における女性たちの影響力と役割を示す象徴的な人物といえるでしょう。彼女の存在は、当時の宮廷内での女性の地位や影響を考える上でも、重要な意味を持っています。

県犬養広刀自は、奈良時代の歴史の中で、さまざまな困難や悲劇を抱えながらも、その存在感を示した女性でした。彼女の生涯は、まさに一つの時代を象徴するものとして後世に語り継がれるでしょう。

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