祖国防衛隊 (在日朝鮮人団体)

祖国防衛隊（そこくぼうえいたい）とは

祖国防衛隊は、1950年に在日朝鮮人によって結成された非合法地下組織であり、略称は「祖防隊」と呼ばれていました。この組織は、当時の在日朝鮮人社会が直面していた様々な問題に対抗するために生まれました。

結成の背景

1950年1月、外国人登録証の更新と未登録者（密入国者など）の強制送還が実施されることになりました。これに対し、在日朝鮮人たちは大きな危機感を抱き、自らの権利と安全を守るための組織として祖国防衛隊を結成しました。同年4月には、上部組織として「朝鮮祖国防衛委員会中央本部」が設けられ、組織としての体制を強化しました。

組織の拡大と活動

その後、レッドパージや朝鮮戦争の勃発という社会情勢の変化を受け、祖防隊は日本社会に革命の機会が到来したと捉え、組織化を急ピッチで進めました。全国の在日朝鮮人が多く住む地域に訓練所を設置し、密入国者や社会に不満を持つ在日朝鮮人たちを積極的に勧誘し、組織に取り込みました。彼らに対しては、思想教育や軍事訓練が施され、組織としての戦闘力強化が図られました。

訓練を終えた祖防隊員は、日本共産党の非合法組織である山村工作隊や中核自衛隊と連携し、日本各地で暴動や破壊活動を展開しました。主な活動目的は、韓国向けの軍需物資の輸送を妨害することであり、これを通じて当時の日本社会に混乱をもたらそうとしました。これらの行動は、当時の社会秩序に対する挑戦と見なされました。

解散とその後

しかし、1952年に破壊活動防止法（破防法）が施行されると、公安当局による取り締まりが強化され、祖防隊の活動は次第に困難になっていきました。さらに、1953年に朝鮮戦争が休戦となったことで、社会情勢も変化し、非合法活動は下火になっていきました。1955年、日本共産党が違法行為を放棄し、平和と憲法を重視する方向に転換したことで、祖防隊との間に溝が生じました。祖防隊はあくまで民族主義的な戦略を貫こうとしたため、日本共産党との関係を断絶しました。

1955年には朝鮮総連が結成され、在日朝鮮人運動は新たな段階に入りました。階級闘争や祖国統一事業が新たな目標となり、非合法闘争を行ってきた祖防隊は発展的に解散することになりました。しかし、この歴史的な経緯から、朝鮮総連は2010年現在においても公安調査庁から「破防法に基づく調査対象」に指定されています。

祖国防衛隊が関与した主な事件

祖国防衛隊やその支持者が関与したとされる主な事件は以下の通りです。

長田区役所襲撃事件
大津地方検察庁襲撃事件
王子朝鮮人学校事件
東成警察署襲撃事件
親子爆弾事件
血のメーデー事件
吹田事件
枚方事件
高田事件 (法学)
大須事件

これらの事件は、当時の社会に大きな衝撃を与え、祖国防衛隊の活動が社会秩序を脅かす存在として認識される要因となりました。

参考文献

祖国防衛隊に関する研究や記録は、以下の文献で詳細に知ることができます。

『集団犯罪の捜査に関する実証的考察（検察研究所特別資料第1号）』（検察研究所　1951年）
『在日朝鮮人運動（実務教養選書）』（篠崎平治　1955年）
『日本の中の三十八度線―民団・朝総連の歴史と現実―』（李瑜煥　1980年）

これらの文献は、祖国防衛隊の活動や当時の社会情勢を理解する上で貴重な情報源となります。

関連項目

祖国防衛隊についてより深く理解するために、以下の関連項目も参照してください。

在日韓国・朝鮮人
レッドパージ
朝鮮戦争
日本共産党（山村工作隊・中核自衛隊）
破壊活動防止法
在日本朝鮮人連盟
在日朝鮮統一民主戦線
在日本朝鮮人総連合会
中核自衛隊
* 山村工作隊

これらの関連項目を参照することで、祖国防衛隊が活動した時代の背景や、その後の在日朝鮮人運動の流れをより深く理解することができます。


祖国防衛隊は、在日朝鮮人社会が直面した困難な状況の中で、自らの権利と安全を守るために結成された組織でした。その活動は、当時の社会に大きな影響を与え、在日朝鮮人運動の歴史において重要な位置を占めています。

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