福富秀勝

福富秀勝：織田信長の忠臣、その生涯と謎

氏名と出自

福富秀勝は、戦国時代から安土桃山時代にかけて活躍した武将であり、織田信長の家臣でした。諱は貞次、もしくは定次とも伝えられています。従来「ふくずみ」と読まれてきた姓については、複数の史料から「ふくずみ」とは異なる読み方であった可能性が示唆されています。

彼の出自については、美濃国山県郡福富出身で、清和源氏土岐氏支流の明智氏一族という説や、尾張国愛知郡岩塚村出身という説があり、詳細は不明な点が残されています。父は福富貞家（平太郎）、妻は朝倉景紀の娘と伝えられています。

織田家への仕官と馬廻衆としての活躍

父の代に尾張に移住し、織田家に仕官したと推測されています。永禄4年（1562年）の西美濃軽海の戦いへの参加を皮切りに、永禄年間には赤母衣衆に選抜され、その後は馬廻衆として信長に従軍しました。

永禄12年（1569年）の大河内城の戦いでは、包囲の柵の警戒にあたる「尺限廻番衆」の一員として参加。元亀元年（1570年）には朝倉氏攻めや南方陣での戦闘にも参加しています。天正元年（1573年）の刀根坂の戦いでは追撃戦で活躍し、同年には多聞山城受け取り奉行、翌年には同城の定番となりました。天正3年（1575年）の長篠の戦いでは、鉄砲奉行として鉄砲隊を指揮する重要な役割を担いました。天正5年（1577年）の雑賀攻めにも従軍しましたが、この後、信長が軍の指揮を離れるにつれ、秀勝は戦場に出る機会が減り、中央での政務、特に副状の発給などに携わる事が多くなりました。


奉行としての役割

天正5年（1577年）の「安土山下町中宛信長朱印状」には、打ち入りなどの際には秀勝に届け出るように記されており、安土の町奉行のような役割を担っていたことがわかります。同年、松永久秀の人質処刑の奉行も務めました。天正6年（1578年）の有岡城の戦いでは、検使として活躍し、茨木城主・中川清秀の降伏に尽力した功績から、信長から鶴と鷹を賜っています。その後も、高天神城攻囲中の徳川家康の陣の視察や、能登国での国内整理、中川清秀への朱印状伝達など、様々な奉行職を務めました。天正10年（1582年）の甲州征伐にも参加していますが、戦闘にはほとんど参加していませんでした。


本能寺の変と最期

本能寺の変（1582年6月2日）では、信忠の直臣として妙覚寺にいました。本能寺に駆けつけることはできませんでしたが、信忠に従い二条城で明智勢と奮戦し、多くの武将と共に討死しました。

興味深いことに、変の後、羽柴秀吉は中川清秀に、秀勝が信長と信忠を膳所に逃がしたという虚報の書状を送っています。しかし、この虚報は秀勝と親交のあった清秀ら摂津衆に影響を与え、結果的に彼らが秀吉側に加勢する一因となり、山崎の戦いの流れに影響を与えた可能性があります。

秀吉の馬廻衆となった「福富平兵衛」という人物は、秀勝の親族と考えられていますが、続柄は不明です。福富秀勝の生涯は、織田信長とその家臣団の動向を知る上で貴重な資料となります。謎多き人物ではありますが、その忠誠心と武勇は、歴史に名を刻むにふさわしいものでした。

参考文献

黒川真道 編『美濃国諸旧記』国史研究会、1915年
谷口克広『信長の親衛隊』中公新書、1998年
* 谷口克広; 高木昭作（監修）『織田信長家臣人名辞典』吉川弘文館、1995年

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