第一継承法

第一継承法（1534年）

第一継承法は、1534年3月にイングランド議会で可決された法律です。正式には「1533年王位継承法」と呼ばれますが、当時の暦法では3月25日が新年だったため、法律名には1533年が用いられています。この法律は、ヘンリー8世の離婚と再婚をめぐる複雑な状況下で制定されました。

背景

1529年以降、宗教改革議会では反聖職者感情が高まり、ヘンリー8世とその側近トマス・クロムウェルは、ローマ[[教皇庁]]との決別を目指しました。ヘンリー8世は、王妃キャサリン・オブ・アラゴンとの離婚を望んでいましたが、教皇クレメンス7世がこれを認めなかったため、教皇の許可なしに離婚を実現する道を探りました。

ヘンリー8世は、まず国内の聖職者たちに圧力をかけ、1530年から1531年にかけて自身をイングランド教会の最高首長と認めさせました。さらに1532年には、教会の立法権を剥奪しました。議会も、教皇権の排除と王権による教会支配を強化する法律を次々と制定しました。このような状況下で、1533年4月には上告禁止法が制定され、教皇の干渉が排除されました。

上告禁止法制定前の1月、ヘンリー8世はカンタベリー大司教トマス・クランマーの立会いの下、アン・ブーリンと極秘結婚しました。そして、上告禁止法制定後の4月（または5月）には、クランマー主宰の法廷で、キャサリンとの結婚の無効、およびアンとの結婚の合法が宣告されました。この背景には、アンが妊娠しており、出産前に離婚・再婚を急ぐ必要があったという事情がありました。

1534年には、聖職者服従法、第一継承法、国王至上法、1534年反逆法が制定され、カトリック教会から離脱したイングランド国教会が成立しました。

内容

第一継承法では、ヘンリー8世とキャサリンの娘であるメアリー（後のメアリー1世）を庶子とし、ヘンリー8世とアンの娘であるエリザベス（後のエリザベス1世）を王位継承者に定めました。この法律は、継承の誓い（この法と王の至上権を認める誓い）を要求された場合、これに応じなければならないとも定めました。この誓いを拒否した場合、1534年反逆法により反逆罪に問われることになりました。ジョン・フィッシャーとトマス・モアは、この誓いを拒否したため、1535年に処刑されました。

第一継承法は、1536年の第二継承法によって廃止されました。この第二継承法では、エリザベスもメアリーと同様に庶子とされ、アンの処刑後、新たに王妃となったジェーン・シーモアの子が継承者とされました。しかし、1543年の第三継承法では、エリザベスとメアリーの両方が嫡子とされました。

その後、1701年の王位継承法が制定され、長らく効力を持っていましたが、2013年の王位継承法によって部分的に改正されました。2015年3月26日に発効したこの改正により、王位継承のルールは現代に合わせて調整されましたが、1701年の王位継承法も部分的に有効なまま残っています。

まとめ

第一継承法は、ヘンリー8世の個人的な事情が、イングランドの宗教と政治に大きな変革をもたらした象徴的な法律です。この法律は、イングランド国教会の成立、そしてその後の王位継承を巡る複雑な歴史の出発点となりました。その後の王位継承法も、この法律の影響を受けていると言えるでしょう。

参考文献

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陶山昇平『ヘンリー八世 暴君か、カリスマか』晶文社、2021年。

関連項目

王位継承法 (曖昧さ回避)
1534年王位継承法
イギリス王位継承順位
別系統によるイングランド王位継承

外部リンク

Full text of the Act

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