縦貫線 (台湾鉄路管理局)

台湾縦貫線：歴史と現代を結ぶ大動脈

台湾縦貫線は、台湾北部の基隆から南部の高雄に至る、台湾鉄路管理局（台鉄）の最も重要な鉄道路線です。この路線は、台湾の発展とともに歩んできた歴史を持ち、現在も多くの人々の足として活躍しています。ここでは、縦貫線の概要、歴史、運行形態について詳しく解説します。

概要

縦貫線は、台湾で最も古く、最も長い鉄道路線です。台湾西部の人口密集地帯を南北に縦断しており、日本統治時代から台湾の最重要幹線と位置づけられてきました。基隆駅から高雄駅までの全長は、かつては海岸線経由で計算されていましたが、現在は山線経由の方が距離が短くなっています。

路線は大きく分けて、以下の区間に分けられます。

縦貫線（北段）: 基隆駅 - 竹南駅間
海岸線（海線）: 竹南駅 - 大甲駅 - 彰化駅間
台中線（山線）: 竹南駅 - 台中駅 - 彰化駅間
成追線: 成功駅 - 追分駅間
縦貫線（南段）: 彰化駅 - 高雄駅間

かつて、竹南駅 - 彰化駅間は内陸部を通る山線が唯一のルートでしたが、輸送力増強のために海岸線が建設されました。現在では、山線は台中線として、海岸線と並行して運行されています。一般的には、北段、海岸線、南段を合わせて「縦貫線」と呼びますが、山線区間は「台中線」と区別されることもあります。

歴史

清朝時代

台湾における鉄道建設は、清朝時代の1891年に始まりました。初代台湾巡撫の劉銘伝が計画した基隆 - 台北間の鉄道が開業し、1893年には新竹まで延伸されました。しかし、資金難により、南への建設は頓挫しました。清朝時代に開業した路線は、基隆 - 新竹間のみでした。

日本統治時代

1895年の下関条約により、台湾は日本に割譲され、鉄道も日本に接収されました。しかし、当時の鉄道設備は老朽化しており、規格も低かったため、大規模な改良が必要でした。また、縦貫線の新竹以南への延伸は民間会社が担当する予定でしたが、資金難により着工できませんでした。

そこで、台湾総督府民政長官の後藤新平は、縦貫線を官設鉄道として建設することを決定しました。長谷川謹介技師長のもと、既存路線の改良と新竹 - 高雄間の建設が開始され、1906年には基隆 - 高雄間が鉄道で結ばれました。1908年には全線が正式に開業し、台湾の重要な交通手段としての役割を担い始めました。

海岸線の建設

当初、竹南駅 - 彰化駅間は、台中を経由する山線が唯一のルートでしたが、この区間には急勾配が存在し、輸送上のネックとなっていました。そのため、輸送力増強と急勾配の解消を目的に、海岸線が建設されることになりました。1922年には海岸線が開通し、山線と海線の2つのルートが併存することになりました。海線開通後は、急行列車や長距離列車は主に海線を経由するようになり、実質的に縦貫線の本線として扱われました。

複線化

縦貫線の複線化は、1919年の基隆駅 - 台北駅間から始まりました。その後、順次複線化が進められ、1943年には主要区間の複線化が完了しました。これにより、輸送能力が大幅に向上し、より多くの旅客と貨物を輸送することが可能になりました。

戦後

戦後、国民党が台湾に移ってきてからの経済発展に伴い、台鉄の輸送量は増加の一途を辿りました。1970年代には縦貫線の電化工事が開始され、1979年には全線電化が完了しました。

運行形態

日本統治時代

縦貫線は、台湾の主要な産品である石炭、米、砂糖などを港湾へ輸送する役割を担っていました。また、人口密集地帯を貫いているため、旅客輸送も活発でした。特に、短距離旅客輸送が多く、運賃も短距離に有利な距離比例法が採用されていました。

縦貫線には急行列車も運行されており、基隆 - 高雄間を直通する列車は1日2往復ありました。昼行と夜行があり、一等車、二等車、三等車、食堂車、寝台車などが連結されていました。これらの急行列車は、海線を経由していましたが、山線沿線の都市である台中への便宜を図るため、複雑な運行ルートが採用されていました。

現在

現在でも縦貫線は重要な路線として機能しており、台北と高雄を結ぶ高速鉄道が開業した後も、多くの優等列車（自強号、普悠瑪号、莒光号）が運行されています。これらの列車は主に山線を経由しており、所要時間も山線の方が短くなっています。

まとめ

台湾縦貫線は、その長い歴史の中で、台湾の発展に大きく貢献してきました。海岸線と山線の存在や、複線化、電化などの変遷を経て、現代の台湾を支える重要な交通インフラとなっています。これからも、台湾の経済と人々の生活を支える大動脈として、その役割を担い続けるでしょう。

参考文献

『植民地の鉄道』、高 成鳳、日本経済評論社、2006年
『大日本帝国の海外鉄道』、小牟田哲彦、東京堂出版、2015年
『列車時刻表　昭和11年2月1日』、台湾総督府交通局鉄道部、1936年

関連項目

* 旧山線

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