腸疾患

腸疾患とは

腸疾患とは、小腸、結腸、直腸といった消化管を構成する主要な部位に生じる疾患の総称です。これらの疾患は、その原因や病態によって多岐に分類され、それぞれ異なる症状や治療法を必要とします。

腸疾患の主な分類

腸疾患は、その発生機序や原因によって大きく以下のカテゴリーに分類されます。

1. 免疫異常による疾患
クローン病: 消化管のあらゆる部位に炎症を引き起こす慢性疾患で、特に小腸や大腸に好発します。腹痛、下痢、体重減少などが主な症状です。
潰瘍性大腸炎: 大腸の粘膜に炎症や潰瘍が生じる疾患で、血便、腹痛、下痢などが特徴的です。
ループス腸炎: 全身性エリテマトーデス（SLE）などの自己免疫疾患に伴って腸に炎症が生じる病態です。
消化管ベーチェット病: 口腔内や外陰部の潰瘍とともに、消化管にも潰瘍や炎症が生じる疾患です。

2. 腫瘍
上皮性腫瘍: 腸管の内側を覆う上皮細胞から発生する腫瘍で、良性のポリープや悪性の癌が含まれます。
小腸癌: 小腸に発生する癌で、まれな疾患ですが、診断が難しく、進行してから発見されることが多いです。
非上皮性腫瘍: 腸管の筋肉層や神経組織などから発生する腫瘍です。
悪性リンパ腫: リンパ組織由来の悪性腫瘍で、腸管に発生することがあります。
消化管間質腫瘍 (GIST): 消化管の壁に発生する腫瘍で、悪性のものが多いです。

3. 感染症
ウイルス性腸炎
ノロウイルス感染症: 感染力が非常に強く、嘔吐、下痢、腹痛などを引き起こします。
ロタウイルス感染症: 乳幼児に多い感染症で、嘔吐、下痢、発熱などが主な症状です。
サイトメガロウイルス感染症: 免疫力が低下した人に感染しやすく、大腸炎を引き起こすことがあります。
細菌性腸炎
ウイップル病: 稀な感染症で、関節痛、腹痛、下痢などを引き起こします。
出血性大腸炎: 腸管出血性大腸菌（O157など）や細菌性赤痢などによる感染で、激しい腹痛や血便を伴います。
腸結核: 結核菌が腸管に感染して炎症を引き起こす疾患です。
クロストリジウム・ディフィシル腸炎: 抗生物質の使用後に発生しやすい大腸炎で、下痢や腹痛を伴います。
原虫性腸炎
アメーバ赤痢: アメーバ原虫による感染症で、下痢や血便を引き起こします。

4. 器質的異常
憩室症: 大腸の壁に小さな袋状のくぼみ（憩室）ができ、炎症や出血を引き起こすことがあります。
イレウス: 腸管が閉塞し、内容物が通過できなくなる状態です。腹痛、嘔吐、腹部膨満などが症状として現れます。

5. 循環異常
虚血性大腸炎: 大腸への血流が低下することで、炎症や潰瘍を引き起こす疾患です。
上腸間膜動脈血栓症: 上腸間膜動脈が閉塞し、小腸や大腸への血流が途絶えることで、激しい腹痛などを引き起こします。

6. 医原性疾患
放射線腸炎: 癌治療のための放射線照射により、腸管に炎症が生じる疾患です。
薬剤性腸炎: 特定の薬剤の副作用で、腸管に炎症や潰瘍が生じる疾患です。

腸疾患の診断と治療

腸疾患の診断には、問診、血液検査、便検査、内視鏡検査、画像検査などが行われます。治療法は、疾患の種類や重症度によって異なり、薬物療法、食事療法、手術療法などが選択されます。早期発見、早期治療が重要となるため、気になる症状がある場合は、早めに医療機関を受診するようにしましょう。

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