苻纂

苻纂（ふ さん）

苻纂は、五胡十六国時代の前秦の皇族です。苻堅の時代に重用され、前秦滅亡後もその復興に尽力しましたが、最後は実弟に裏切られ、志半ばで生涯を終えました。

生涯

苻纂は、苻堅の時代に尚書令に任じられ、魏昌公に封じられました。385年、前秦の首都長安が西燕によって陥落すると、苻堅は姚萇に捕らえられ殺害されます。苻堅の死後、その庶長子である苻丕が皇帝として即位すると、苻纂は3千人余りの兵を率いて合流し、苻丕から太尉に抜擢され、東海王に封じられました。

しかし、苻丕は苻纂の兵力を警戒し、苻纂もまた不満を抱いていたようです。386年、西燕の慕容永が晋陽に侵攻すると、苻丕は苻纂と王永に討伐を命じますが、襄陵で大敗を喫し、王永らは戦死しました。この敗戦を機に、苻丕は苻纂に暗殺されることを恐れ、東垣へ逃亡中に東晋の馮該に討たれました。

苻丕の死後、苻纂は晋陽の兵をまとめ、弟の苻師奴と共に杏城へ逃れました。その後、苻丕の子である苻懿と苻昶が苻登の下へ逃れると、苻登は皇帝として即位します。苻登は苻纂に使者を送り、太師・大司馬に任じ、魯王に封じようとしましたが、苻纂は苻懿を差し置いて苻登が帝位を継いだことに不満を示しました。しかし、長史の王旅に諫められ、やむなくこれを受け入れました。

その後、苻纂は盧水胡や屠各、新平羌といった勢力を糾合し、その数は10万を超えました。弟の苻師奴を上郡へ侵攻させ、羌族を討伐するなど勢力を拡大しました。また、前秦の楊定と共に後秦領を攻めるなど、積極的に活動しました。

しかし、387年9月、前秦の蘭櫝と連携して長安奪還を計画していた際、苻師奴から帝位に就くことを勧められます。苻纂がこれを拒否すると、苻師奴は政変を起こし、苻纂を殺害してしまいました。そして、苻師奴は自ら秦公を称し、自立を果たしました。

苻纂は前秦復興に奔走しましたが、弟の裏切りによって志半ばで命を落としました。彼の死は、前秦の再興をさらに困難にしたと言えるでしょう。

参考文献

『晋書』巻115
『資治通鑑』巻106-107

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