莫護跋

莫護跋（ばくごばつ）

莫護跋（生没年不詳）は、中国の三国時代に活躍した鮮卑の部族長（大人）であり、慕容部の始祖として知られています。彼の息子は慕容木延で、前燕を築いた慕容廆は曾孫にあたります。

生涯

莫護跋は、当時有力な鮮卑の大人の一人でした。彼は元々、中国北方の国境地帯である塞外に居住していました。

魏が建国されて間もない頃、莫護跋は自らが率いる鮮卑の部族とその大人たちを率いて故郷を離れ、遼西へと移住しました。この時に移住した集団が、後の慕容部の母体となります。

景初2年（238年）6月、魏の大将軍である司馬懿が遼東で自立していた公孫淵を討伐するために出兵すると、莫護跋はこれに協力し、その功績により率義王に封じられました。これにより、彼は正式に遼西に住居を構えることを認められ、棘城（現在の遼寧省錦州市義県）の北部に自身の領土を得ました。

彼の死後、息子の慕容木延が後を継いで大人の位に就きました。没年は不明ですが、正始6年（245年）には既に慕容木延が大人として活動していたことから、それ以前に亡くなったと考えられています。

慕容という呼称について

慕容部という部族名、そして氏族名は莫護跋から始まったとされていますが、その語源については様々な説が存在します。

後漢の桓帝の時代、鮮卑の大人であった檀石槐が、分裂していた鮮卑の諸部族をまとめ上げ、統一勢力を築きました。檀石槐は領土を東部・中部・西部の3つに分け、各部に複数の大人を置いて統治させましたが、中部には「慕容」という人物がおり、彼は部族の大集団を統率する有力者となったという説。胡三省は、この人物こそが慕容部の始まりであると述べています。もしこの説が正しければ、莫護跋は祖先の名前を部族名としたことになります。
燕や代の地方では、歩揺冠（歩くたびに揺れる金製の簪）をかぶる少年が多くいました。莫護跋はこれを気に入り、髪をまとめて歩揺冠をかぶるようになったため、諸部族は彼のことを歩揺と呼ぶようになり、それが訛って慕容と呼ばれるようになったという説。ただし、この説は前燕が建国された後、臣下が広めたものとも言われています。
莫護跋自身が「天と地の徳を慕い、日・月・星の度量を継承する」と宣言し、慕容を姓として採用したという説。
莫護跋の祖先が慕容寺という場所に拠点を構えていたことから、これを部族名として採用したという説。ただし、これは王沈の著した『魏書』にある『柯最・闕居・慕容らが大帥となった』という文章の「等」の文字が、写本の過程で「寺」にすり替わってしまったことで生まれた誤解であるとも言われています。

伝承

伝説によると、莫護跋の八世の祖先は乾帰という人物であり、彼は神霊を感じ取る能力を持っていたとされています。彼はある時、金銀の襦鎧を身に着け、金銀の鞍や轡を付けた白馬に乗って天から降り立ったと言われています。鮮卑の人々はこれを神とみなし、君主として推戴したと伝えられています。

脚注

参考資料

『晋書』（慕容廆載記）
『資治通鑑』巻81
『十六国春秋』

関連項目

魏
公孫淵
鮮卑
* 慕容部

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