菅原文時

菅原文時（すがわら の ふみとき／ふんとき）は、平安時代前期から中期にかけて活躍した公卿であり、文人でもありました。右大臣・菅原道真の孫であり、大学頭・菅原高視の次男として生まれました。最終的な官位は従三位・式部大輔です。

経歴

朱雀天皇の時代、天慶6年（943年）に45歳という遅咲きながら対策に合格し、官僚としてのキャリアをスタートさせます。文官として、内記、大学頭、弁官などの要職を歴任しました。特に村上天皇の時代前半の10年以上にわたる内記の任期中には、諸国の神社の神祇名号の訛りや位階の誤りを正すなど、重要な業績を上げています。

天暦8年（954年）には右少弁に任命され、その後、弁官として右中弁まで昇進しました。弁官時代には、天皇の詔命に従い『叙位略例』と目録の作成や、撰国史所における『新国史』の編纂に携わりました。また、村上天皇が諸臣に政治に関する意見を求めた際には、天徳元年（957年）に『意見封事三箇条』を提出し、政治改革の必要性を訴えました。その内容は以下の通りです。

奢侈を禁じること
官職の売買を禁止すること
鴻臚館を維持し、外国人を迎え入れ、文人を奨励すること

円融天皇の時代までには正四位下に昇進し、貞元3年（978年）には式部大輔に任じられました。天元3年（980年）には、公卿への昇進を目指し、可能性の低い参議への任官を諦めて従三位への叙位を願い出て、翌天元4年（981年）正月にそれが叶い、従三位に叙せられました。同年9月8日に83歳で亡くなっています。最終官位は式部大輔従三位でした。

人物

菅原文時は、漢詩人としても知られており、詩集『文芥集』を著していましたが、残念ながら散逸してしまっています。しかし、『本朝文粋』『扶桑集』『和漢朗詠集』には、彼の漢詩作品が残されており、特に『和漢朗詠集』には本朝詩人の中で最も多くの作品が収録されています。

逸話として、文時自身が不出来だと考えていた詩文の草案を、門弟の慶滋保胤が絶賛したという話が『袋草紙』に記されています。また、勅撰歌人としても名を連ねており、『拾遺和歌集』には彼の和歌が1首収録されています。

官歴

注記のないものは『公卿補任』に基づいています。

天慶6年（943年）：対策に合格
天暦4年（950年）11月10日：大内記兼美濃介
時期不詳：大学頭
天暦8年（954年）10月：右少弁
天徳元年（957年）：文章博士
天徳2年（958年）：左少弁（考）
天徳4年（960年）：右中弁
時期不詳：正四位下
貞元3年（978年）10月17日：式部大輔
天元3年（980年）1月5日：式部大輔兼文章博士尾張権守
天元4年（981年）1月7日：従三位。9月8日：死去（式部大輔従三位）

系譜

『尊卑分脈』によれば、以下の通りです。

父：菅原高視
母：菅原宗岳（または宗岡氏）の娘
妻：不詳
男子：菅原惟熈 - 左衛門尉諸陵助。文章生だったこと以外は不明。『扶桑集』、『江談抄』に漢詩が残る。子に菅原宣義がいる。
男子：菅原輔昭 - 大内記従五位下。中古三十六歌仙にも名を連ねる。
男子：元真（923-1008） - 僧都・安楽寺別当
男子：安杲（安果） - 少僧都・安楽寺別当

脚注

菅原文時は、その才能と功績により、平安時代を代表する公卿・文人の一人として、後世に名を残しています。

参考文献

『公卿補任 第一篇』吉川弘文館、1982年
宮崎康充編『国司補任 第四』続群書類従完成会、1990年
飯倉晴武校訂『弁官補任 第一』続群書類従完成会、1983年
『朝日日本歴史人物事典』朝日新聞社、1994年
『日本大百科全書ニッポニカ』小学館、1993年

もう一度検索