薬師台 (町田市)

薬師台（やくしだい）は、東京都町田市に位置する町名で、現行の行政区分では薬師台一丁目から三丁目までの区域を指します。郵便番号は195-0073です。

地理と景観

町田市のほぼ中央部に広がる薬師台は、広大な薬師池公園の東側、多摩丘陵の一角を占める高台に開発された閑静な戸建住宅地です。

街区の東西には主要道路である薬師金井通り（町田3・4・15号線）が、南北には薬師台通り（町田3・4・35号線）がそれぞれ通っています。周囲は、東に金井三丁目（榛名坂ヒルズ）、南に金井一丁目（日の出が丘）、西と北には野津田町（袋ヶ丘、山王ガーデンシティ）や金井町が隣接しています。

薬師台は、景観法および町田市景観条例に基づく「景観計画」において、鶴川地域の他の住宅地と共に、多摩丘陵特有の起伏に富んだ地形を生かした「尾根の緑に包まれた住宅地の景観づくり」というテーマが定められています。

豊かな自然環境に恵まれており、東側には金井関山川島緑地や金井3丁目緑地が、南側には薬師台けやき公園や薬師台かしの木公園が、西側には鎌倉街道沿いの尾根緑地や町田リス園、薬師台はにわ公園、薬師台とんがり帽子公園が、そして北側には薬師台1号緑地や山王塚公園などが隣接し、文字通り緑地と公園に囲まれたエリアです。また、街の南北には緑豊かな遊歩道（緑歩道）が整備されています。現在でも、薬師台一丁目の一部には開墾された畑が現存しています。

薬師台は、東京都の緑化協定において第1号の認定を受けた地域としても知られています。この緑化協定により、各住宅の道路に面した部分は生垣を設けることが義務付けられています。さらに、建築協定によって、主に薬師台二丁目と三丁目では、屋外にテレビアンテナを設置することが制限されています。

歴史

薬師台の宅地造成が行われる前の遺跡調査では、川島谷遺跡群、金井関山遺跡群、長谷戸遺跡といった縄文時代から平安時代にかけての複合遺跡が見つかっています。これらの遺跡からは、陥穴、炉穴、土坑、竪穴建物、掘立柱建物など、多岐にわたる遺構の存在が確認されました。特に、現在の薬師台一丁目に位置する長谷戸遺跡からは、縄文時代草創期中頃のものとされる爪形文土器の小さな破片が出土し、復元されています。また、現在の薬師台二丁目と三丁目に広がる川島谷遺跡群からは、平安時代を中心に合計40棟以上の建物跡が検出されています。

飛鳥時代には武蔵国が成立し、現在の薬師台を含む地域は多摩郡の一部となりました。平安時代から室町時代前半にかけては、この地は小山田庄に属していました。

戦国時代には後北条氏の領地となり、1590年（天正18年）の豊臣政権による小田原征伐を経て徳川家康の支配地に移りました。江戸時代には、江戸幕府の直轄地である天領と旗本の知行地が交互に繰り返されました。

江戸時代の地誌によれば、現在の薬師台一丁目の大部分は金井村に含まれており、古くから長谷堀（はせぼり）と呼ばれる用水路が整備され、その周辺には畑が広がっていました。北側および北東側は山林でした。一方、現在の薬師台二丁目と三丁目の大部分は野津田村に含まれており、こちらにも用水路があり、その周囲には田畑が営まれ、その他の部分は山林として利用されていました。

沿革

近代以降の行政区画の変遷は以下の通りです。

1868年（慶応4年/明治元年）には武蔵知県事の管轄となり、その後東京府を経て神奈川県に移管されました。
1889年（明治22年）4月、町村合併により神奈川県南多摩郡鶴川村の一部となります。
1893年（明治26年）4月、南多摩郡が東京府に移管され、東京府南多摩郡鶴川村の一部となりました。
1943年（昭和18年）7月には東京都制が施行され、東京都南多摩郡鶴川村の一部となります。
1958年（昭和33年）2月、町村合併により町田市が誕生し、その区域に含まれることとなりました。

薬師台の宅地開発は、1981年（昭和56年）5月に鶴川第三土地の造成工事として開始されました。1986年（昭和61年）からは住宅地の分譲が始まり、薬師台一丁目は主に共和宅建開発（熊谷組）によって、薬師台二丁目と三丁目は小田急グループによって開発・分譲が行われました。同年3月1日には、金井町と野津田町の一部から薬師台一丁目から三丁目が正式に新設されました。1987年（昭和62年）3月11日には、東京都の緑化協定の第1号として認定を受けています。その後、1994年（平成6年）1月15日には金井町の一部が薬師台三丁目に、2020年（令和2年）7月25日には町田リス園が薬師台一丁目にそれぞれ組み込まれました。

「やくし台」について

「薬師」の部分をひらがなで表記した「やくし台」は、主に薬師台二丁目および三丁目において小田急グループが開発した宅地や販売する分譲住宅などを指す際に用いられる通称です。「やくし台」という文字を含む図形は小田急不動産によって商標登録されています。また、薬師台の中でも特に小田急によって開発された地域全体を「やくし台」と呼ぶこともあります。過去には、薬師台三丁目に「やくし台センター」という小田急不動産の建物が建てられ、不動産の案内や販売を行っていましたが、現在は廃止されています。しかし、その跡地付近にあるバス停には現在も「やくし台センター」の名前が使われています。

交通

薬師台へのアクセスは、主に路線バスが利用されます。小田急小田原線の町田駅または鶴川駅から神奈川中央交通のバスが運行されています。

町田駅からは、町田駅停留所から町53系統または町55系統で薬師池停留所を利用する方法があります。また、町田バスセンターから町37系統または深夜バスの町61系統に乗車し、やくし台二丁目、やくし台三丁目、または終点のやくし台センター停留所で降りることも可能です。

鶴川駅からは、鶴57系統でやくし台三丁目停留所または終点のやくし台センター停留所を利用できます。鶴66系統に乗車し、山王ガーデン入口停留所で下車する方法や、町53系統で薬師池停留所を利用する方法もあります。

主要な道路からのアクセスとしては、東京都道18号府中町田線（鎌倉街道）の薬師台入口T字路交差点から薬師金井通りを経由したり、薬師池公園のT字路交差点から町田リス園横の市道を通ったりすることで街に入ることができます。東京都道3号世田谷町田線（鶴川街道）からは、金井一丁目の十字路交差点から薬師台通りを北上するか、金井東のT字路交差点から薬師金井通りを西進してアクセスできます。神奈川県道・東京都道57号相模原大蔵町線（芝溝街道）を利用する場合は、大蔵町の十字交差点から薬師台通りを南下するか、綾部の十字交差点から山王通りを南に進むルートがあります。

主な施設

薬師台および周辺にはいくつかの施設があります。

商業施設としては、そうてつローゼン薬師台店があります。
医療施設としては、薬師台メディカルTERRACE（医療モール）が利用できます。
動物園としては、町田リス園が隣接しています（2020年に薬師台一丁目に編入）。
その他、山王塚公園、金井関山川島緑地、薬師台とんがり帽子公園、薬師台はにわ公園など、多くの公園や緑地が点在しています。

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