藤原岳守

藤原岳守（ふじわら の おかもり）は、平安時代初期に活躍した貴族です。藤原南家、巨勢麻呂流の血を引く藤原三成の長男として生まれました。官位は従四位下、近江守にまで昇りつめました。

学問と立身

若い頃から学問に励み、特に史伝を深く読み込んだとされています。また、書道にも秀でており、草隷の書を能くしたと言われています。天長元年（824年）には、皇太子・正良親王（後の仁明天皇）に仕えるようになり、その立ち居振る舞いの優雅さから、親王に重んじられました。天長3年（826年）には内舎人に任ぜられ、官吏としてのキャリアをスタートさせました。

官僚としての活躍

正良親王が即位し仁明天皇となると、岳守は右近衛将監、次いで内蔵助を歴任しました。承和元年（834年）には従五位下に叙せられ、讃岐介、左馬助と順調に昇進しました。承和5年（838年）には左少弁に任ぜられますが、耳の不調により朝議の聴取が困難となり、弁官としての業務を続けることができなくなりました。そのため、大宰少弐に転任することになりました。

大宰府赴任中には、唐人の貨物調査の際に、元稹と白居易の詩筆を発見し、天皇に献上しました。天皇はこれを非常に喜び、承和6年（839年）に従五位上に昇叙しました。

その後、左兵衛佐を経て、承和12年（845年）には正五位下・左近衛少将、承和13年（846年）には従四位下・右近衛中将と昇進を重ねました。

地方官としての人望

承和15年（848年）には近江守として地方官に転じました。岳守は地方官としてその職務を全うし、人々から深く慕われました。任期を終えた後も、中央での栄達を望まず、その人柄と業績は当時の人々から賞賛されました。仁寿元年（851年）9月26日に44歳で亡くなり、最終官位は散位従四位下でした。

人物像

藤原岳守は、生まれつき寛大な性格で、身分の低い官人にも分け隔てなく接し、その言葉に耳を傾けたと伝えられています。また、孝心が篤く、天長7年（830年）に父・三成が亡くなった際には、悲しみのあまり命を落としかけたとされています。その人柄は、多くの人々に感銘を与えました。

官歴

天長3年（826年）：内舎人
天長7年（830年）：辞官（父服喪）
天長10年（833年）：右近衛将監、内蔵助
承和元年（834年）：従五位下
承和3年（836年）：讃岐介、兼左馬頭
承和5年（838年）：左少弁、大宰少弐
承和6年（839年）：従五位上
承和12年（845年）：正五位下、左近衛少将
承和13年（846年）：従四位下、左馬頭、右近衛中将、兼美作守
承和15年（848年）：近江守
嘉承4年（851年）：出居侍従、卒去（散位従四位下）

系譜

父：藤原三成
母：藤原真夏の娘
妻：不詳
男子：藤原滋柯

参考文献

森田悌『続日本後紀』（上下巻）、講談社〈講談社学術文庫〉、2010年
『尊卑分脈 第二篇』吉川弘文館、1987年
市川久編『近衛府補任』続群書類従完成会、1992年

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