藤原真先

藤原真先（ふじわら の まさき）は、奈良時代の公卿であり、藤原南家の出身です。父は太師・藤原仲麻呂で、母は藤原宇比良古です。初名は執弓（しゅうきゅう）といい、後に真先と改めました。また、真光（まさみつ）とも記されたこともありました。

生涯

真先は、父・仲麻呂の権勢を背景に急速に昇進しました。天平勝宝9年（757年）には、父が紫微内相に就任すると同時に従五位下に叙爵します。天平宝字2年（758年）には、淳仁天皇の即位に伴い、父とともに藤原恵美朝臣の美称を賜り、従五位上・兵部大輔に任じられました。その後も、天平宝字3年（759年）には従四位下、天平宝字5年（761年）には従四位上兼美濃飛騨信濃按察使と昇進を重ね、天平宝字6年（762年）には参議に任じられ公卿に列します。同年12月には正四位上・大宰帥に叙任されました。

しかし、孝謙上皇と道鏡、淳仁天皇と仲麻呂との対立が深まる中、仲麻呂は天平宝字8年（764年）に反乱を企てます。真先もこの反乱に加担し、平城京を脱出して近江国へ逃れますが、官軍に敗れ、一族と共に琵琶湖畔で処刑されました。この事件は「藤原仲麻呂の乱」として知られています。

人物

真先は、歌人としても才能があり、『万葉集』には、兵部大丞・大原今城が伝誦した、播磨介時代の真先（執弓）の和歌が収録されています。

官歴

真先の官歴は、『続日本紀』に記録されています。

時期不詳：正六位上
天平勝宝9歳（757年）5月20日：従五位下
天平勝宝9歳（757年）12月18日：播磨介
時期不詳：執弓から真先に改名
天平宝字2年（758年）8月1日：従五位上
天平宝字2年（758年）8月25日：藤原朝臣から藤原恵美朝臣に改姓
天平宝字3年（759年）6月16日：従四位下
時期不詳：兵部大輔
天平宝字5年（761年）正月7日：従四位上、大和守
天平宝字5年（761年）正月16日：美濃飛騨信濃按察使
天平宝字6年（762年）正月4日：参議
天平宝字6年（762年）12月1日：正四位上、大宰帥

系譜

真先の系譜は、『尊卑分脈』に記録されています。

父：藤原仲麻呂
母：藤原宇比良古（藤原房前の娘）

参考文献

宇治谷孟『続日本紀 全現代語訳（中）』講談社〈講談社学術文庫〉、1995年。
薗田香融「恵美家子女伝考」『日本古代の貴族と地方豪族』塙書房、1992年。ISBN 978-4-8273-1086-3。
木本好信『藤原仲麻呂政権の基礎的考察』高科書店、1993年。
木本好信『藤原仲麻呂政権の基礎的考察』志学社〈志学社選書〉、2021年。ISBN 978-4-909868-03-9。 ※書き下ろし原稿を加えた復刊。
* 黒板勝美・国史大系編修会 編『尊卑分脈』全4篇、吉川弘文館〈新訂増補国史大系〉。

もう一度検索