藤原貞嗣

藤原貞嗣（ふじわら の さだつぐ）

藤原貞嗣は、平安時代初期に活躍した公卿です。藤原南家出身で、参議を務めた藤原巨勢麻呂の十男として生まれました。名は貞継とも記されます。

経歴

延暦13年（794年）に従五位下に叙爵し、官吏としてのキャリアをスタートさせました。延暦16年（797年）には民部少輔に任ぜられ、その後、備前守や典薬頭を歴任しました。延暦22年（803年）には、暴風雨で破損した遣唐使船の被害状況を調査するという任務も担っています。

延暦23年（804年）には左少弁、延暦25年（806年）には従五位上・右中弁に叙任されるなど、桓武天皇の治世末期には弁官として順調に昇進を重ねました。

平城天皇の時代に入ると、一時的に弁官を辞任したためか、昇進は停滞しました。しかし、嵯峨天皇の時代に入ると、大同5年（810年）正月に正五位下に叙せられ、同年9月の薬子の変の際には近江守に任ぜられ、平城上皇と東国を分断するという重要な役割を担い、乱後の11月には従四位下へと昇叙されました。

その後も、右京大夫や皇后宮大夫といった要職を歴任し、弘仁6年（815年）には従四位上、弘仁7年（816年）には蔵人頭に任命されるなど、着実に昇進を重ねました。そして、弘仁10年（819年）には参議に任ぜられ、ついに公卿の仲間入りを果たしました。弘仁11年（820年）には正四位下・右大弁に叙任されています。

弘仁年間中期には、右大臣の藤原園人や中納言の藤原縄主・藤原葛野麻呂といった有力な公卿が相次いで亡くなったため、中納言以上の公卿がわずか3名（藤原冬嗣・藤原緒嗣・文室綿麻呂）という状況になりました。そのため、弘仁12年（821年）の正月に参議から中納言への登用が行われた際に、良岑安世とともに中納言に昇進しました。

『日本後紀』の編纂にも参画しましたが、完成を見ることなく、弘仁15年（824年）1月4日に薨去しました。享年66。最終官位は中納言従三位兼行宮内卿でした。

官歴

延暦13年（794年） 正月10日：従五位下
延暦16年（797年） 3月27日：民部少輔
延暦17年（798年） 7月27日：備前守
延暦22年（803年） 3月18日：典薬頭
延暦23年（804年） 6月9日：左少弁
延暦25年（806年） 正月28日：兼丹後守、止典薬頭。2月14日：従五位上。2月16日：右中弁、丹後守如元
大同3年（808年） 日付不詳：止右中弁
大同5年（810年） 正月7日：正五位下。9月10日：近江守。11月22日：従四位下
弘仁3年（812年） 2月10日：右京大夫
弘仁6年（815年） 7月13日：従四位上、皇后宮大夫（皇后・橘嘉智子）
弘仁7年（816年） 11月：蔵人頭
弘仁9年（818年） 正月10日：兼伊予守
弘仁10年（819年） 3月1日：参議、大夫守如元。7月：兼治部卿、大夫守如元
弘仁11年（820年） 正月27日：右大弁。11月：正四位下
弘仁12年（821年） 正月7日：従三位。正月9日：中納言。11月：兼宮内卿

系譜

父：藤原巨勢麻呂
母：藤原永手の娘
妻：紀沙弥の娘
男子：藤原三藤
男子：藤原常守
妻：栄山諸依の娘
男子：藤原安野
男子：藤原高岑
男子：藤原高仁（?-835）
妻：多治比公成の娘
男子：藤原岑人
生母不詳の子女
男子：藤原吉備
男子：藤原直世

参考文献

森田悌『日本後紀 （上）』講談社〈講談社学術文庫〉、2006年
森田悌『日本後紀 （中）』講談社〈講談社学術文庫〉、2006年
森田悌『日本後紀 （下）』講談社〈講談社学術文庫〉、2007年
『公卿補任 第一篇』吉川弘文館、1982年
『尊卑分脈 第二篇』吉川弘文館、1987年

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