藤原葛野麻呂
藤原葛野麻呂（ふじわら の かどのまろ）は、奈良時代から平安時代初期にかけて活躍した公卿です。藤原北家出身で、大納言・藤原小黒麻呂の長男として生まれました。官位は正三位・中納言にまで昇り、その生涯は政治の中枢で重要な役割を担いました。
葛野麻呂が重用されるようになった背景には、妹の上子が桓武天皇の後宮に入ったことが大きく影響しています。延暦4年（785年）に従五位下に叙せられたのを皮切りに、延暦6年（787年）には陸奥介に任ぜられ地方行政にも携わりました。その後、延暦10年（791年）に少納言として京官に復帰すると、右少弁、太政官の三等官と要職を歴任。平安京の造宮使にも任ぜられ、新京の宅地を官人に配分するなど、都の建設にも貢献しました。
延暦13年（794年）には正五位下・左少弁に叙任され、翌年には従四位下・左中弁と、弁官として急速な昇進を果たしました。さらに、皇太子・安殿親王（後の平城天皇）の春宮亮、後に春宮大夫も兼任するなど、皇室との関係も深めています。
延暦20年（801年）には、遣唐大使という重要な役目を任されます。延暦22年（803年）には、難波津から出航するも、暴風雨により船が破損し、航海が困難になるというアクシデントに見舞われました。延暦23年（804年）に再度出航し、福州に漂着。しかし、遣唐使の証である印符が別の船にあったことや、葛野麻呂が提出した事情説明文の不備により、身分を疑われるという事態に陥ります。この時、同行していた空海が代筆した文書を提出することで、ようやく遣唐使であることが認められました。その後、長安に入り徳宗への謁見を果たし、翌年の徳宗崩御、順宗即位にも立ち会いました。帰国後は、唐の情勢に関する報告を行うとともに、その功績により従三位に昇叙され、公卿に列しました。
延暦25年（806年）、安殿親王が即位し平城天皇となると、春宮大夫であった葛野麻呂は、権参議、参議へと昇進。式部卿も兼任しました。同年には東海道観察使にも任ぜられ、地方行政にも関与しました。正税の出挙における不正を指摘し、改善を求めるなど、民衆の負担を軽減しようとする姿勢も見られました。その後も天皇の近臣として重用され、大同3年（808年）には中納言、翌年には正三位に叙任されています。
大同5年（810年）に薬子の変が勃発した際には、平城上皇に挙兵を思いとどまるよう諫めたものの、聞き入れられませんでした。変後、薬子との縁戚関係から罪に問われかけましたが、上皇に対する諫言が認められ処罰を免れました。
弘仁3年（812年）には、太政官で次席の地位を占めるまでになりました。また、嵯峨天皇のもとで『弘仁格式』の編纂にも携わるなど、文化的な活動にも貢献しました。
しかし、弘仁9年（818年）には、年下の藤原冬嗣が大納言に任ぜられ、昇進を越されてしまいます。同年11月10日に薨去。享年64歳。最終官位は正三位中納言でした。死後、子息の藤原常嗣が父に続いて遣唐大使に任命され、実際に渡唐した最後の遣唐使となりました。
葛野麻呂は、正六位上から始まり、最終的に正三位中納言まで昇進しました。以下に主な官歴を記します。
時期不詳：正六位上
延暦4年（785年）正月7日：従五位下
延暦5年（786年）9月29日：摂津国班田次官
延暦6年（787年）2月25日：陸奥介
延暦10年（791年）7月4日：少納言、11月8日：右少弁
延暦13年（794年）正月7日：従五位上、2月25日：春宮亮（春宮・安殿親王）、3月29日：兼左少弁、10月28日：正五位下
延暦14年（795年）2月19日：右中弁、4月：従四位下、7月：左中弁
時期不詳：右大弁
延暦16年（797年）2月9日：兼春宮大夫
延暦18年（799年）正月29日：大宰大弐
延暦20年（801年）8月10日：遣唐大使、兼越前守
延暦23年（804年）正月：従四位上
延暦24年（805年）正月16日：刑部卿、越前守如元、7月25日：従三位
延暦25年（806年）2月16日：春宮大夫、3月18日：御装束司（桓武天皇崩御）、権参議、4月18日：参議兼式部卿、5月24日：東海道観察使
大同2年（807年）4月16日：停参議
大同3年（808年）2月：中納言、式部卿如元
大同4年（809年）3月30日：正三位、4月14日：兼東宮傅（春宮：高岳親王）
大同5年（810年）9月13日：去東宮傅
弘仁3年（812年）12月5日：兼民部卿
弘仁9年（818年）11月10日：薨去（正三位中納言）
『尊卑分脈』によると、葛野麻呂の系譜は以下の通りです。
父：藤原小黒麻呂
母：太秦嶋麻呂の女
妻：伊蘇志総麻呂の女
男子：藤原永宗
妻：菅野浄子（菅野池成の女）
七男：藤原常嗣（796-840）
妻：和気清麻呂の女
男子：藤原氏宗（810-872）
妻：山輪王の女
男子：藤原安棟
生母不明
男子：藤原常永（?-867）
男子：藤原豊宗
男子：藤原高貞
男子：藤原弟貞
男子：藤原後継
* 男子：藤原是緒
葛野麻呂は、その生涯を通じて、政治、外交、文化の各方面で重要な役割を果たしました。特に遣唐使としての経験は、当時の日本と唐との交流において重要な貢献を果たしました。
経歴
葛野麻呂が重用されるようになった背景には、妹の上子が桓武天皇の後宮に入ったことが大きく影響しています。延暦4年（785年）に従五位下に叙せられたのを皮切りに、延暦6年（787年）には陸奥介に任ぜられ地方行政にも携わりました。その後、延暦10年（791年）に少納言として京官に復帰すると、右少弁、太政官の三等官と要職を歴任。平安京の造宮使にも任ぜられ、新京の宅地を官人に配分するなど、都の建設にも貢献しました。
延暦13年（794年）には正五位下・左少弁に叙任され、翌年には従四位下・左中弁と、弁官として急速な昇進を果たしました。さらに、皇太子・安殿親王（後の平城天皇）の春宮亮、後に春宮大夫も兼任するなど、皇室との関係も深めています。
延暦20年（801年）には、遣唐大使という重要な役目を任されます。延暦22年（803年）には、難波津から出航するも、暴風雨により船が破損し、航海が困難になるというアクシデントに見舞われました。延暦23年（804年）に再度出航し、福州に漂着。しかし、遣唐使の証である印符が別の船にあったことや、葛野麻呂が提出した事情説明文の不備により、身分を疑われるという事態に陥ります。この時、同行していた空海が代筆した文書を提出することで、ようやく遣唐使であることが認められました。その後、長安に入り徳宗への謁見を果たし、翌年の徳宗崩御、順宗即位にも立ち会いました。帰国後は、唐の情勢に関する報告を行うとともに、その功績により従三位に昇叙され、公卿に列しました。
延暦25年（806年）、安殿親王が即位し平城天皇となると、春宮大夫であった葛野麻呂は、権参議、参議へと昇進。式部卿も兼任しました。同年には東海道観察使にも任ぜられ、地方行政にも関与しました。正税の出挙における不正を指摘し、改善を求めるなど、民衆の負担を軽減しようとする姿勢も見られました。その後も天皇の近臣として重用され、大同3年（808年）には中納言、翌年には正三位に叙任されています。
大同5年（810年）に薬子の変が勃発した際には、平城上皇に挙兵を思いとどまるよう諫めたものの、聞き入れられませんでした。変後、薬子との縁戚関係から罪に問われかけましたが、上皇に対する諫言が認められ処罰を免れました。
弘仁3年（812年）には、太政官で次席の地位を占めるまでになりました。また、嵯峨天皇のもとで『弘仁格式』の編纂にも携わるなど、文化的な活動にも貢献しました。
しかし、弘仁9年（818年）には、年下の藤原冬嗣が大納言に任ぜられ、昇進を越されてしまいます。同年11月10日に薨去。享年64歳。最終官位は正三位中納言でした。死後、子息の藤原常嗣が父に続いて遣唐大使に任命され、実際に渡唐した最後の遣唐使となりました。
官歴
葛野麻呂は、正六位上から始まり、最終的に正三位中納言まで昇進しました。以下に主な官歴を記します。
時期不詳：正六位上
延暦4年（785年）正月7日：従五位下
延暦5年（786年）9月29日：摂津国班田次官
延暦6年（787年）2月25日：陸奥介
延暦10年（791年）7月4日：少納言、11月8日：右少弁
延暦13年（794年）正月7日：従五位上、2月25日：春宮亮（春宮・安殿親王）、3月29日：兼左少弁、10月28日：正五位下
延暦14年（795年）2月19日：右中弁、4月：従四位下、7月：左中弁
時期不詳：右大弁
延暦16年（797年）2月9日：兼春宮大夫
延暦18年（799年）正月29日：大宰大弐
延暦20年（801年）8月10日：遣唐大使、兼越前守
延暦23年（804年）正月：従四位上
延暦24年（805年）正月16日：刑部卿、越前守如元、7月25日：従三位
延暦25年（806年）2月16日：春宮大夫、3月18日：御装束司（桓武天皇崩御）、権参議、4月18日：参議兼式部卿、5月24日：東海道観察使
大同2年（807年）4月16日：停参議
大同3年（808年）2月：中納言、式部卿如元
大同4年（809年）3月30日：正三位、4月14日：兼東宮傅（春宮：高岳親王）
大同5年（810年）9月13日：去東宮傅
弘仁3年（812年）12月5日：兼民部卿
弘仁9年（818年）11月10日：薨去（正三位中納言）
系譜
『尊卑分脈』によると、葛野麻呂の系譜は以下の通りです。
父：藤原小黒麻呂
母：太秦嶋麻呂の女
妻：伊蘇志総麻呂の女
男子：藤原永宗
妻：菅野浄子（菅野池成の女）
七男：藤原常嗣（796-840）
妻：和気清麻呂の女
男子：藤原氏宗（810-872）
妻：山輪王の女
男子：藤原安棟
生母不明
男子：藤原常永（?-867）
男子：藤原豊宗
男子：藤原高貞
男子：藤原弟貞
男子：藤原後継
* 男子：藤原是緒
葛野麻呂は、その生涯を通じて、政治、外交、文化の各方面で重要な役割を果たしました。特に遣唐使としての経験は、当時の日本と唐との交流において重要な貢献を果たしました。
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