虚除権渠

虚除権渠（きょじょ けんきょ）

虚除権渠（生没年不詳）は、中国の五胡十六国時代に活動した反乱勢力の首領であり、上郡出身の夷人です。句渠知の乱に乗じて自立し、秦王を自称しました。

生涯

虚除権渠は、上郡に割拠する夷人の酋長でした。

320年、巴賨族の酋長である句渠知が挙兵すると、周辺の巴賨族・氐族・羌族・羯族など30万人以上が決起し、虚除権渠もこれに呼応しました。関中は大混乱に陥り、昼間でも城門が閉ざされるほどでした。前趙の皇帝、劉曜は游子遠に鎮圧を命じ、游子遠は陰密に進攻すると、瞬く間に句渠知を撃破して乱を平定しました。

游子遠が軍を転進させて隴右に入ると、虚除権渠は氐族・羌族十万家余りを纏め上げて游子遠に対抗し、険阻な地に拠って秦王を名乗りました。游子遠が虚除権渠の砦に接近すると、虚除権渠は迎撃に出ましたが、5度戦っていずれも敗れました。虚除権渠は大いに恐れ、投降しようとしましたが、子の虚除伊余は諸将に「かつて劉曜が親征してきた時も、我らには何ら問題にはならなかった。游子遠如きにどうして降伏などする必要があるのか」と述べ、精鋭5万を率いて出撃しました。早朝には虚除伊余の軍勢は游子遠の砦門に到達しました。游子遠は戦わずに守りを固めました。

敵軍の弱気な姿勢を見た虚除伊余は、次第に驕りが見えるようになりました。これを見た游子遠は虚除伊余の陣営に夜襲を掛けました。虚除伊余の兵は大いに乱れ、夜明けには大勢が決しました。游子遠は虚除伊余を生け捕りにし、その将兵をことごとく捕虜としました。虚除権渠は恐れて、髪を振り乱し顔に傷をつけて游子遠に投降しました。

西戎の中では、虚除権渠の部族が最も強勢であり、みな虚除権渠の後ろ盾を得て、前趙へ反抗していました。そのため、虚除権渠が降伏すると、全ての西戎が前趙に服属し、大乱は平定されました。

その後、虚除権渠は游子遠の上表により征西将軍に任じられ、西戎公に封じられました。また、虚除伊余とその兄弟、部落20万人余りと共に長安に移されました。この後の虚除権渠の動向は不明です。

参考文献

『晋書』巻103 載記第3
『資治通鑑』 第91巻

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