西之橋

西之橋の概要

西之橋は、神奈川県横浜市中区を流れる堀川に架かる道路橋です。この橋は、地域の交通を支える重要な役割を果たしており、その歴史は江戸時代初期まで遡ります。

歴史

江戸時代から開港まで

江戸時代初期、現在の大岡川河口から吉野町駅付近までは入り江でした。その湾口を塞ぐように宗閑嶋と呼ばれる半島が伸びていました。この入り江や宗閑嶋沿いの沼地では、吉田新田や太田屋新田といった新田開発が行われました。1859年に横浜港が開港すると、太田屋新田や宗閑嶋には外国人居留地が設けられました。

堀川の開削と関所としての橋

外国人居留地と日本人居住区の衝突を防ぐため、1861年（文久元年）に宗閑嶋の付け根が開削され、堀川が誕生しました。この時、谷戸橋、前田橋とともに西之橋の3つの橋が架けられ、関所としての役割を担いました。これらの橋は、当時の社会情勢と安全確保において重要な存在でした。

明治時代の架け替え

西之橋は、1893年（明治26年）に神奈川県技師の野口嘉茂の設計により、ピン結合のプラットトラス形式の橋に架け替えられました。この架け替えは、当時の土木技術の進歩を示すものであり、橋のデザインにもその特徴が見られます。

関東大震災後の復興事業

関東大震災後の1926年（大正15年）に、復興事業の一環として、現在の鋼2ヒンジアーチ橋に架け替えられました。この架け替えにより、橋の耐久性が向上し、近代的な姿へと変化しました。旧橋のトラスは中村川の上流の翁橋に転用され、その後さらに浦舟水道橋に移設されました。この一連の転用は、当時の土木技術と資源の有効活用を示しています。

現在の西之橋

現在の西之橋は、左岸が中区山下町、右岸が石川町に位置し、関内駅から山手隧道を経て本牧方面を結ぶ主要交通路の一部を担っています。橋の上空には首都高速狩場線の高架橋が架かり、交通の要所となっています。

橋の選定と遺産認定

1991年（平成3年）には、中村川の吉野橋、浦舟水道橋とともに「かながわの橋100選」に選ばれました。また、2015年度には、山手隧道、桜道橋、打越橋、谷戸橋とともに「元町・山手地区の震災復興施設群」として土木学会選奨土木遺産に認定されました。これらの選定と認定は、西之橋の歴史的価値と土木遺産としての重要性を物語っています。

周辺の河川と橋

西之橋のすぐ上流側で派大岡川が合流していましたが、1977年に埋め立てられました。現在は中村川と堀川が一筋の川となり、西之橋付近が両河川の境界となっています。隣接する橋として、上流側には亀の橋と石川町駅前歩道橋、下流側には市場通り橋と前田橋があります。

まとめ

西之橋は、江戸時代の新田開発から始まり、横浜港開港、関東大震災という歴史的な出来事を経て、現在の姿に至っています。その歴史的背景、土木技術の変遷、そして地域社会における役割は、この橋が持つ独特の魅力を形成しています。また、「かながわの橋100選」や土木学会選奨土木遺産に認定されていることからも、その重要性と価値が伺えます。西之橋は、単なる交通路としてだけでなく、横浜の歴史と文化を伝える貴重な遺産と言えるでしょう。

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