西京雑記

西京雑記

『西京雑記』（せいけいざっき）は、前漢の首都であった長安（現在の西安）を中心に、その時代の逸話や風俗を集めた書物です。成立時期や著者については諸説ありますが、晋代の葛洪に仮託されることが多いものの、明確な作者は特定されていません。

概要

本書の内容は、歴史的な正確性よりも物語としての面白さを重視したものが多く、史実とは異なる記述も含まれています。そのため、歴史書というよりも、むしろ小説に近い性質を持つと評価されています。

現行本は6巻構成で、130条前後の記事から構成されています。内容は多岐にわたり、前漢時代の宮廷生活、文物、年中行事、人物に関する逸話などが詳細に記述されています。

作者について

『西京雑記』の作者については、様々な説が存在します。

葛洪説: 跋文において葛洪が劉歆の『漢書』を参考にしたと述べられていることに基づきますが、内容の荒唐無稽さから疑問視されています。
劉歆説: 魯迅の『中国小説史略』で提唱された説の一つです。
呉均説: 同様に、『中国小説史略』で言及されています。

殷芸の『小説』が『西京雑記』を引用していることから、成立時期は梁代初期以前と考えられ、時代的には葛洪説が最も可能性が高いとされています。

評価

歴史書としての評価は高くありません。顔師古は『漢書』の注釈で『西京雑記』を批判しており、正史と矛盾する記述も多く見られます。例えば、淮南王劉安が仙人になったという話は、王充の『論衡』でも批判されている古い伝説です。

しかし、小説としては、その短い文章の中に興味深い物語が凝縮されており、読み物として楽しまれています。特に、王昭君が画家に賄賂を渡さなかったために匈奴に嫁入りすることになった話は有名で、漢文の教科書にも採用されています。

また、一部の記述は考古学的発見によって裏付けられています。例えば、漢の皇帝の埋葬に「珠襦玉匣」（金縷玉衣）が用いられたという記述は、劉勝墓から金縷玉衣が発見されたことで実証されました。このように、歴史的な資料としても一定の価値が認められています。

邦訳

福井重雅 編『訳注 西京雑記・独断』東方書店、2000年。ISBN 4497200078。

参考文献

『四庫全書総目提要』巻140・子部50・小説家類1・西京雑記6巻

関連項目

裨聖会 - 『西京雑記』の逸話から命名された。

外部リンク

* 『西京雑記』 （四部叢刊本）

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