西大寺 (奈良市)

西大寺の概要

西大寺（さいだいじ）は、奈良県奈良市西大寺芝町に位置する真言律宗の総本山です。山号は勝宝山で、日本の仏教界において重要な寺院として広く知られています。西大寺の本尊は釈迦如来で、奈良時代に孝謙上皇の指導のもと、僧・常騰が開山となって建立されました。この寺院は南都七大寺の一つとして、当初は壮大な伽藍を誇りましたが、平安時代に入ると一時的に衰退したのち、鎌倉時代に入ると叡尊によって復興されました。

歴史的背景

西大寺の創建は天平宝字8年（764年）にさかのぼります。孝謙上皇は恵美押勝の乱の平定を祈願し、金銅四天王像を造ることを決意しました。その後、天平神護元年（765年）に四天王像が完成し、西大寺が創設されるのです。当時、道鏡という僧が中央政界で大きな力を持っており、彼の思想的影響も西大寺の設立に寄与したとされています。また、西大寺の名称は、著名な「東大寺」に対抗する形で名付けられたと考えられます。

当時、西大寺には薬師金堂、弥勒金堂、四王堂、十一面堂、東西の五重塔が立ち並んでおり、僧侶たちは多くの仏像を安置して信仰を深めていました。ところが、平安時代に入ると西大寺は火災や台風により衰退し、興福寺の支配下に入ることとなります。

叡尊による復興

そんな中、鎌倉時代の僧・叡尊が西大寺の中興の祖として活動を始めました。彼は1201年に大和国添上郡で誕生し、11歳から多くの寺院で研鑽を積みました。叡尊は、文暦2年（1235年）に西大寺に住し、その後90歳で亡くなるまで、荒廃した寺の復興に尽力しました。彼は戒律の復興を目指し、困窮者や病者の救済事業にも尽力しました。

そこで生まれた仏像や工芸品の多くは、現在も西大寺に残されています。叡尊の影響を受けた高僧も数多く輩出され、南北朝時代には、西大寺の末寺が日本各地に存在するようになります。

室町時代以降

しかし、明応8年（1499年）には細川政元の家臣による焼き討ちがあり、文亀2年（1502年）には火災の被害も受けました。その後、江戸時代に入ると、幕府から300石の寺領を認められ、再建が始まります。現在の伽藍は、すべて江戸時代以降に再建されたものです。

1895年には真言宗から独立し、真言律宗を組織しました。この新しい宗派には多くの関連寺院が含まれています。

文化財

西大寺は多くの文化財を有しており、特に本堂は重要文化財に指定されています。本堂は、寛政10年（1798年）頃に着工され、文化5年（1808年）頃に完成したものです。木造釈迦如来立像は西大寺の本尊であり、建長元年（1249年）に仏師・善慶によって制作されました。その他にも、木造文殊菩薩像や四王堂にある重要な仏像が数多く残されています。

西大寺には、毎年行われる「大茶盛」と呼ばれる行事もあり、これは直径30センチメートル以上の大茶碗を使ってお茶が立てられ、参拝者にふるまわれます。これらの伝統行事は、寺院の重要な文化の一部となっています。

アクセス

西大寺へのアクセスは、近畿日本鉄道（近鉄）の大和西大寺駅南口から徒歩約3分と便利です。現在も多くの人々が訪れ、信仰の場としてだけでなく、歴史的な観光地としてのこれまでの道のりを振り返ることができます。

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