西明寺 (西安市)

西明寺は、中国・唐代に都の長安に建立された仏教寺院です。現在の西安市近郊、白廟村にその跡地があります。この寺院は、唐代仏教において重要な役割を果たし、多くの高僧が滞在し、重要な仏教文献が編纂された場所として知られています。

歴史

西明寺の歴史は、隋代にさかのぼります。寺院があった場所には、隋の尚書令・楊素の邸宅があったとされています。しかし、楊素の子である楊玄感が反乱を起こしたことにより、その邸宅は没収されました。その後、唐代に入り、顕慶元年（656年）に、高宗と武則天が病弱だった皇太子・李弘の病気平癒を祈願して、西明寺が創建されました。創建当時の規模は非常に壮大であったと記録されており、インドの祇園精舎をモデルにしたとされています。近年行われた発掘調査でも、その壮大さを裏付けるように、10を数える大殿の存在が確認されています。

西明寺は、玄奘三蔵も滞在したことがあり、仏教史家として名高い道宣が上座を務めた寺院としても知られています。道宣は、この寺院で『続高僧伝』や『大唐内典録』などの重要な仏教史書を編纂しました。また、道宣の弟子の道世も『法苑珠林』をこの寺で著しました。さらに、久視元年（700年）以降には、義浄もこの寺を訪れ、経典の翻訳を行っています。唐の中期には、慧琳が『一切経音義』を、円照が『貞元新定釈教目録』をこの寺で著しています。このように、西明寺は仏教研究の中心地としての役割を担っていました。

しかし、会昌の廃仏の際には、西明寺も廃毀の対象となりました。その後、宣宗によって大中元年（847年）に復興され、福寿寺と改名されました。この復興は、西明寺が唐代仏教においていかに重要な存在であったかを示しています。

位置

西明寺は、長安城内の右街に属する延康坊（第3街第7坊）の南西隅に位置していました。延康坊は、長安城内で最も栄えた西市に隣接し、また、宮城にも近い場所でした。隋代には楊素の邸宅があったほか、唐代には閻立本や張籍などの高官の邸宅が立ち並んでいたとされています。また、宝暦3年（827年）以降には、諸王の王府が置かれるなど、政治的にも重要な場所でした。

大安寺との関係

西明寺は、インドの祇園精舎をモデルに建立されましたが、今度は西明寺自身が、日本の大安寺のモデルになったという説が、古くから『扶桑略記』や『元亨釈書』などの文献に記されています。この事実は、西明寺が唐代の仏教寺院として、いかに大きな影響力を持っていたかを物語っています。大安寺は、奈良時代に建立された寺院であり、そのモデルが西明寺であったとすれば、両寺院の間には深い関係があったと考えられます。この説は、西明寺が東アジアの仏教寺院に与えた影響を示すものとして、非常に興味深いものです。

西明寺は、その壮大な規模、数々の高僧の滞在、重要な仏教文献の編纂など、唐代仏教において重要な役割を果たした寺院でした。また、その影響は日本にも及び、大安寺のモデルになったという説は、この寺院の国際的な影響力の大きさを物語っています。

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