貞昌院

天神山 貞昌院

横浜市港南区の上永谷の地に静かに佇む天神山貞昌院は、曹洞宗に属する古刹です。山号を天神山、本尊として釈迦如来と十一面観音を祀っており、明堂文龍大和尚を開山として仰いでいます。

寺院の起源と歴史

貞昌院の歴史は、足利時代に廃絶されたとされる天台宗の宿坊、天性院に遡ります。この天性院は、上之坊と下之坊の二つの坊に分かれていました。特に下之坊には、学問の神として知られる菅原道真公の五男、菅原淳茂（通称：菅秀才）が配流され、この地で過ごしたという伝承が残されています。彼は父・道真公が自ら彫ったとされる尊像を深く崇敬し、朝夕これに手を合わせていたと伝えられており、この出来事が永谷天満宮の創建の端緒となったとする伝説が語り継がれています。

時は流れて天正10年（1582年）、宅間上杉家の上杉規富公が永谷天満宮の再建を発願した際、戸塚区川上町にある徳翁寺の第四世住職、明堂文龍大和尚に請願し、現在の横浜市営地下鉄上永谷駅近くにあたる上永谷町字籠森の地に寺院を建立しました。これが、曹洞宗貞昌院の始まりです。以来、貞昌院は永谷天満宮の別当（寺院が神社の管理を行う役職）を務めることとなりました。創建当初は天満宮と山を隔てた場所に位置していましたが、文化14年（1817年）に現在の境内地へと移転しました。

近現代の変遷と復興

明治時代に入り、貞昌院は大きな試練に見舞われます。明治19年（1886年）に発生した火災により、惜しくも主要な堂宇が焼失してしまいました。しかし幸いなことに、本尊である十一面観世音菩薩像や、美しい欄間彫刻などは、近隣の檀家の方々の献身的な努力により無事運び出され、難を逃れることができました。その後、第28世である無外源量大和尚の尽力により、明治34年（1901年）には諸堂が再建され、寺院としての機能を取り戻しました。

さらに大正時代には、大正12年（1923年）の関東大震災により再び伽藍が倒壊するという被害を受けましたが、翌年には復旧が進められ、それまでの茅葺屋根から亜鉛葺きの堅固な伽藍として再建されました。太平洋戦争中の昭和18年（1943年）には、戦時下の金属類回収令により、大切に守られてきた梵鐘を供出せざるを得ませんでした。現在の伽藍の姿は、昭和46年（1971年）に実施された改築によるもので、この時に屋根が銅板葺きとなりました。

本堂に安置されている荘厳な釈迦如来像は、著名な彫刻家である長谷川雅宣氏の作品であり、平成3年（1991年）に盛大な開眼供養が執り行われました。また、創建の伝説に登場する菅原道真公の尊像（神像）は、長年にわたり貞昌院で大切に保管されていました。祭事や出開帳などの際に一時的に永谷天満宮へ遷座されていましたが、近年では丑年の天満宮例大祭の時のみに動座されるのが通例となっていました。しかし、平成21年（2009年）に永谷天満宮境内に神体を保管するための施設が完成したことに伴い、以降はこの道真公の尊像は天満宮に常時安置されることとなりました。

主な行事と活動

貞昌院では、年間を通じて様々な仏事や行事が行われています。主なものとしては以下の通りです。

1月1日：修正会（しゅしょうえ）
春季・秋季彼岸会
盂蘭盆会（うらぼんえ）
4月8日に近い日曜日：灌仏会（かんぶつえ）、通称「花まつり」
7月26日：施餓鬼会（せがきえ）、施食会（せじきえ）とも呼ばれます
12月31日：除夜の鐘

これらの年間行事に加えて、毎週の定例行事も行われています。

毎週木曜日朝：坐禅会
毎週木曜日午後：茶道教室（表千家）

交通アクセス

貞昌院へのアクセスは以下の通りです。

横浜市営地下鉄ブルーライン 上永谷駅より徒歩約5分
環状2号線沿い

参考文献

* 『新編相模国風土記稿』

（貞昌院公式サイトへの外部リンクもありますが、本文への記載は控えます）

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