身体尺

身体尺：人体を基準とした単位

身体尺とは、人間の身体部位を基準として定められた単位のことです。手軽に利用できる単位として、世界各地で自然発生的に生まれました。しかし、身体の大きさには個人差があるため、後により客観的な基準へと置き換えられることとなりました。現在では、単位名の一部に身体尺に由来するものが残っていても、本来の長さとは異なっていることが多くなっています。

概要

身体尺の多くは長さの単位ですが、両手ですくえる容積も単位として使われることがあります。

古代エジプトやメソポタミアで使われた古い身体尺にはキュビットがあり、これは肘から中指の先までの長さを指していました。キュビットの下位の単位としては、パーム（手の横幅）やディジット（指の幅）がありました。

[ヤード]]・ポンド法の長さの単位であるフィートは「足」を意味します。また、英語のインチ]は[[ラテン語で1⁄12を意味するunciaに由来しますが、他のヨーロッパの言語では親指を意味する語が使われることが多いです。ヤードの起源には諸説ありますが、キュビットの2倍に由来するという説もあります。マイルは歩幅（1複歩）の1000倍に由来するため、これも身体尺の一種と言えます。

各地の単位の例

古代中国

古代中国の単位の語源は必ずしも明らかではありませんが、漢字の字形や文献の記載から、身体尺を起源としていたと考えられるものがいくつか存在します。

尺: 手を広げたときの親指の先から中指の先までの長さに由来します（約18センチメートル）。
寸: 親指の幅に由来すると考えられています。
尋: 両腕を広げたときに指先から指先までの長さに由来します。
仞: 水深を測るために長く用いられました。
丈: 成人男子の身の丈を表します。
咫: 手のひらの下端から中指の先までを指します。
歩: 1複歩（2歩）あるいたときの距離に由来します。
升: 身体尺ではありませんが、両手ですくった量に由来すると考えられています。

古代日本

日本では奈良時代以降に中国の度量衡を借用しましたが、それ以前の固有の単位も存在していました。

つか: 手で物をつかんだときの親指以外の4本の指の幅を指します。
ひろ: 両手を広げた幅を指します。
あた: 親指から中指の先端までの長さを指します。
さか: 「あた」と同じ意味を持ちます。

アイヌ

アイヌ民族の間でも、独自の人体尺が使用されていました。

テㇺ: 両手を広げた長さを指します。
ウォ: 親指から人差し指の先端までの長さを指します。
イク: 人差し指の第一関節から第二関節までの間の長さを指します。

古代メソポタミア

[シュメール]]では、紀元前2600年ごろから長さの単位の使用が見られます。[[キュビット]は518.6ミリメートルの長さがありました。

古代エジプト

[キュビット]を基本としますが、全国を通して統一された標準は存在しませんでした。

古代イスラエル

ヘブライ語聖書には、身体を使って計測したことが記されています。基本の長さの単位はアンマで、キュビットに相当します。

古代インド

古代インドの単位は文献によって長さや体系が大きく異なります。

アングラ: 指を意味します。
ハスタ: 手を意味し、キュビットに相当します。
ヴィタスティ: スパンにあたります。
パーダ: 足を意味し、フィートに相当します。
プルシャ: 人を意味し、人の背丈の長さに由来します。

古代ギリシア

基本になる単位はプース（足）でした。以下のような身体尺がありました。

ダクテュロス: 指を意味します。
コンデュロス: 指関節を意味します。
パライステー: 手のひら、手の幅を意味します。
リカス: 親指と人差し指の距離を意味します。
オルトドーロン: 手の長さ（手首から指先まで）を意味します。
スピタメー: 広げた親指と小指の先の距離（スパン）を意味します。
プース: 足を意味します。
ピュグメー: 拳骨を意味します。
ピュゴーン: 肘から指の第1関節までの長さを指します。
ペーキュス: 前腕を意味し、キュビットに相当します。
ハプルーン・ベーマ: 単歩を意味します。
ディプルーン・ベーマ: 複歩を意味します。
オルギュイア: 伸ばした両腕の端から端までの距離を意味します。

古代ローマ

基本単位はペース（足）であり、以下のような単位がありました。

クビトゥム: 肘を意味します。
グラドゥス: 1歩を意味します。
パッスス: 1複歩（2歩）を意味します。
パルムス: 掌を意味します。
ディギトゥス: 指を意味します。

もう一度検索