車胤

車胤（しゃ いん）

車胤（生年不詳 - 400年）は、中国の東晋時代末期の政治家です。字は武子といい、『晋書』にその伝記が記されています。

「蛍雪の功」の人物

ほぼ同時代の孫康と共に、「蛍雪の功」の故事で知られています。「蛍雪の功」は、苦労して学問に励むことのたとえで、車胤は蛍の光を利用して勉学に励んだことが由来となっています。

生涯

車胤の曾祖父である車浚は、呉の会稽太守を務めていました。父の車育は南平郡の主簿でした。

幼い頃、父に連れられて太守の王胡之と対面した際、王胡之はその才能を見抜き、学問に励むよう勧めました。

車胤の家は貧しく、灯油を買うことができませんでした。そこで、夏になると数十匹の蛍を絹の袋に入れ、その光で書物を照らして昼夜勉学に励みました。

成長すると、容姿端麗で頭の回転が速い人物として知られるようになりました。桓温が荊州にいた頃、その才能を認められ従事に抜擢され、主簿・別駕を経て征西長吏となり、中央政界に進出しました。

寒門の出身でありながら、勉学で身を立てた車胤は、遊興にも長けていました。上官が来た際には率先して宴席を設け、彼がいない宴会は盛り上がらないと言われるほどでした。謝安にも寵愛されました。

寧康初年には中書侍郎に任命され、関内侯に封じられました。孝武帝が『孝経』を学ぶ際には、謝安、陸納、卞眈、謝石、袁宏、王混らと共に学び議論に加わりました。その後も順調に出世し、侍中となりました。太元年間には、太学の学生を100人増員し、車胤が領国子博士に任じられました。また、郊廟明堂の儀式について意見を求められると、その意見が採用され、周囲もそれに従いました。

その後、驃騎長史、太常と官位を上げ、臨湘侯にまで進みましたが、病のため一時官職を退きました。

やがて復職し、護軍将軍に任じられました。当時、王国宝が会稽王の司馬道子に取り入り、丞相として特別な待遇を与えるよう提案しましたが、車胤はかつての成王が周公に行った礼遇とは異なると反対し、病と称して署名を拒否しました。皇帝はこの王国宝の提案に激怒し、車胤の態度を喜びました。

隆安初年には、呉興郡太守に任じられましたが、病を理由に辞退しました。その後、輔国将軍を加えられ、丹陽尹に任じられました。

最終的には吏部尚書にまで上り詰めましたが、司馬元顕（司馬道子の子）の不正を江績と共に司馬道子に訴えようとしたことが司馬元顕に知られ、謀略によって自殺に追い込まれました。車胤の突然の死は、朝廷に深く悼まれたと伝えられています。

人物評価

車胤は、逆境を乗り越え、努力によって身を立てた人物として知られています。また、政治家としても優れた手腕を発揮し、多くの人々に慕われました。

参考文献

* 『晋書』（s:晉書/卷083）…顧和、袁瓌、江逌、殷顗、王雅と同じ伝

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