退耕行勇

退耕行勇について

概要

退耕行勇（たいこうぎょうゆう）は、鎌倉時代前期を代表する臨済宗の僧侶です。本名は四条氏で、後に玄信から行勇に名を改め、道号として退耕を用いました。出身地については、山城国説や相模国酒匂説などがあり、具体的な情報は定かではありません。

活動の軌跡

初めに、退耕行勇は密教を学び、その後、鎌倉鶴岡八幡宮の供僧として活動しました。彼は永福寺や大慈寺（明王院に隣接）の別当を務め、その特異な宗教的背景を生かしながら、豊かな宗教生活を送りました。特に、源頼朝は頻繁に彼のもとを訪れ、また、頼朝の妻である北条政子が出家・剃髪する際には、彼が戒師としてその大切な儀式を執り行いました。

承安元年（1171年）には、常陸入道念西からの招きで荘厳寺を再興し、宗教的な中心地としての役割を担いました。加えて、正治2年（1200年）には、栄西が鎌倉に下向した際、寿福寺で参禅し、その教えを受けることとなりました。 彼は後に博多の聖福寺の住持となり、建永元年（1206年）には栄西の後を継いで東大寺の大勧進職に就任しました。

建保5年（1217年）には、源実朝の御台所である西八条禅尼が彼のもとで落飾し、貞応3年（1224年）には北条義時継室の伊賀の方も同様に行勇の教えを受けました。このように、退耕行勇は女性信者にも大きな影響を与えていました。

禅密兼修の道場

承久元年（1219年）に、退耕行勇は高野山に上山し、金剛三昧院を開創しました。ここでは、禅宗と密教の両方を兼修する道場を設け、教えを広めるための活動を行いました。さらに、北条泰時の開基により鎌倉に東勝寺や常楽寺を設立し、足利氏の開基によって浄妙寺を開山しました。特に浄妙寺には、行勇の唯一の頂相彫刻が残され、これは重要文化財として現在でもその価値が認められています。

また、東大寺に残る嘉禎3年（1237年）の「行勇書状（重要文化財）」には、東大寺の鎮守八幡宮の遷宮事業に関する助言が記されており、ここから彼の宗教的指導者としての側面が伺えます。

師弟関係

退耕行勇は多くの弟子を育て、その中には円爾や心地覚心といった著名な僧たちが含まれます。彼らは退耕行勇の教えを受け継ぎ、さらなる宗教活動に励みました。

退耕行勇の業績や影響は、彼の生きた時代を超えて現代にも引き継がれており、彼の教えは日本の宗教史において重要な位置を占めています。

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