運賃制度

運賃制度とは

運賃制度とは、旅客運送事業において、旅客が支払うべき運賃を算出するための仕組みです。様々な方式が存在し、それぞれの特徴や適用される交通機関も異なります。この記事では、主な運賃制度について詳しく解説します。

概要

運賃制度には、ロンドン地下鉄で採用されているゾーン制や、パリ地下鉄の均一運賃など、様々なシステムが存在します。日本の鉄道では、駅間の距離に応じて運賃が設定されることが多いですが、このような詳細な距離制運賃を採用している国は多くありません。また、実際には複数の制度を組み合わせた運賃体系を採用している事業者が多く、明確に区分することが難しい場合もあります。

例えば、広島電鉄や福井鉄道福武線のように、軌道区間は均一運賃、鉄道区間では距離制運賃を採用しているケースがあります。これは、均一制、区間制、距離制の3つの運賃制度が併存していると捉えることができます。また、軌道区間を大きなゾーン、鉄道区間の各駅を1駅のみのゾーンとみなせば、ゾーン制運賃として解釈することも可能です。

日本のバスでは、利用実態に合わせて複雑な運賃制度を採用している事業者が多く見られます。例えば、両備バスや富山地鉄バスでは、区間制運賃に、特定の停留所によってゾーン制運賃が内包されています。過疎地域では、バス停間の距離が長いため、全ての停留所間の運賃が異なる場合もあり、区間制やゾーン制といった従来の概念では区別できないケースも存在します。

各運賃制度の詳細

均一制

均一制とは、距離や時間に関わらず、運賃が一定の制度です。鉄道においては、切符の種類や改札システムを単純化できるメリットがあります。パリ地下鉄のように、1回券、回数券、1日券などのように券種がシンプルになる傾向があります。

日本では、主に大都市や地方中核都市の中心市街地の路線バス、コミュニティバス、路面電車などで採用されることが多いです。均一制運賃では、乗車整理券が発行されない点が特徴で、運賃は前払いであることが多いですが、後払いの事業者も存在します。

均一制は利用者にとって分かりやすい反面、営業距離が長くなると制度の限界が生じます。そのため、均一制が採用されている場合でも、定期乗車券に限って距離制が用いられることがあります。

採用事業者

バス: 東京都交通局（都営バス）の23区内均一運賃、名古屋市交通局の一部路線、奈良交通の一部路線など、多数の事業者が採用しています。
鉄道: 札幌市電、山万ユーカリが丘線、舞浜リゾートライン、都電荒川線、東急世田谷線、東急こどもの国線、富山地方鉄道富山港線・富山軌道線、豊橋鉄道東田本線、嵯峨野観光鉄道嵯峨野観光線、京福電気鉄道嵐山本線・北野線（普通運賃のみ）、広島電鉄市内線、伊予鉄道松山市内線、長崎電気軌道、熊本市電、鹿児島市電、パリ地下鉄など

区間制

区間制とは、路線を区間ごとに区切り、区間を跨ぐごとに運賃を加算する制度です。バスや乗合タクシーでは、区界停留所と外方停留所（または普通停留所）という概念で構成されます。区界停留所でない途中の停留所で下車する場合は、次の区界停留所まで切り上げて計算します。ゾーン制との違いは、同じ運賃の境界線が駅やバス停上、または事業者が独自に設定した地点上にできる点です。

区間制は、均一制よりも細やかな運賃設定が可能ですが、主要なターミナル駅やバスターミナルを越えると、運賃が割高になる傾向があります。

日本では、大都市や地方中核都市の郊外の路線バスで多く採用されていますが、鉄道や乗合タクシーでの導入事例は少ないです。ただし、区間制を発展させた対距離区間制を採用する鉄道事業者は多いです。

採用事業者

バス: 佐世保市営バスの大半の路線など、多数の事業者が採用しています。
鉄道: 叡山電鉄（普通運賃のみ）、近鉄生駒鋼索線、筑豊電気鉄道、小田急箱根鋼索線など

ゾーン制

ゾーン制とは、路線網を矩形や同心円状のゾーンで区切り、ゾーンを跨ぐごとに運賃を加算する制度です。区間制の区間を大きく取ったものと捉えることもできます。バスや乗合タクシーでは、区界停留所と指定停留所という概念で構成されます。区界停留所でない途中の停留所で下車する場合は、ゾーンの中心となる停留所までで計算し、切り捨てとなる場合と切り上げとなる場合があります。区間制との違いは、同じ運賃の境界線が2つの駅やバス停の間にできる点です。

ゾーン制は、主要なターミナル駅やバスターミナルの以遠同士を乗車する場合、割安になる場合があります。しかし、隣同士の駅や停留所間であっても、異なるゾーンに属していると割高になることがあります。

主に地方中核都市の中心市街地や郊外の路線バス、高速バスや乗合タクシーなどで採用されることが多いです。JRの特定都区市内制度や航空普通運賃のマルチエアポート制度も、ゾーン制に似た事例として挙げられます。

採用事業者

バス: 京福バスの大和田エコライン、京阪バスの定期券ゾーンなど、一部の事業者が採用しています。
鉄道: ロンドン地下鉄、阪堺電気軌道（大阪市内区間・堺市内区間をゾーンとしている）、仙台市地下鉄（仙台駅から各方面3駅以内を均一運賃とするゾーンを設定）など

距離制

距離制とは、運送距離に応じて運賃を加算する制度です。運送開始時点からの「初乗り」と呼ばれる距離に応じた最低運賃が設定され、その「初乗り」を超過すると、一定距離ごとに一定額が加算されます。

日本では、タクシー（時間制と併用されることが多い）、一部の鉄道事業者の普通運賃や多くの鉄道事業者の定期運賃で採用されています。距離区分の短い対距離区間制と同様ですが、日本の鉄道では、一般的に1キロ毎の区切のものを距離制と呼んでいます。

対距離区間制

対距離区間制とは、距離制運賃と同様ですが、「初乗り」超過後の距離区分を長く取ったものです。日本では、大多数の鉄道事業者で採用されています。

時間制

時間制とは、運送開始時点（乗車時）からの時間ごとに運賃を加算する制度です。ドイツやイタリアなどの鉄道で多く採用されており、日本ではタクシーなどで見られます。

カレンダー制

カレンダー制とは、運行日によって運賃が変動する制度です。旅客の移動が特定時期に集中する傾向が強い旅客機や旅客船で主流の方式で、日本では主に夜行高速バスで見られます。

まとめ

運賃制度は、交通機関の料金体系を決定する重要な要素です。均一制、区間制、ゾーン制、距離制など、様々な制度があり、それぞれ特徴が異なります。事業者は、利用者の利便性や経営状況を考慮しながら、適切な運賃制度を選択する必要があります。

外部リンク

運賃-民鉄用語辞典
普通旅客運賃表のみかた (PDF) - 関鉄グリーンバス・関鉄パープルバス路線バス

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