金剛輪寺

金剛輪寺は、滋賀県愛知郡愛荘町に位置する天台宗の寺院です。山号は松峯山と称し、地元では松尾寺とも呼ばれています。本尊は秘仏である聖観音菩薩です。この寺は、西明寺、百済寺と共に湖東三山の一つに数えられ、特に秋には「血染めのもみじ」と称される紅葉の名所として多くの人々を魅了します。

歴史

金剛輪寺の歴史は古く、寺伝によれば、奈良時代の僧・行基が聖武天皇の勅願により開創したとされています。創建は天平9年（737年）または天平13年（741年）と伝えられています。この地がかつて秦川村と呼ばれていたことから、渡来系の秦氏との関連を指摘する説もあります。平安時代前期には、天台宗の僧・円仁（慈覚大師）によって再興され、寺では円仁を中興の祖としています。ただし、これらの創建伝承を裏付ける確実な史料は存在しません。しかし、寺に伝わる仏像の制作年代などから、平安時代後期には既に寺が存在していたと考えられています。

中世の金剛輪寺の歴史は必ずしも明確ではありませんが、境内には平安時代後期から鎌倉時代にかけての多くの仏像が残されています。また、石垣で築かれた僧坊の跡も多数見られます。本堂は、元寇の戦勝を記念して近江守護佐々木頼綱（六角頼綱）によって建立されたと伝えられています。本堂の須弥壇金具には弘安11年（1288年）の銘がありますが、現存する本堂は南北朝時代に再興されたものとされています。

鎌倉時代末期には、天台密教の一派である西山流の本拠地となりました。天正元年（1573年）、織田信長の兵火によって湖東三山の百済寺が全焼し、金剛輪寺も被害を受けました。しかし、現存する本堂や三重塔は、寺僧の尽力によって焼失を免れたとされています。本堂が山奥に位置していたため、焼き討ちを免れたという説もあります。

江戸時代以降は次第に衰微し、楼門の2階部分が崩壊したり、三重塔の三重目が倒壊したりするなどの被害を受けました。慶応4年（1868年）には、薩摩藩の西郷隆盛や公家の岩倉具視の支援を受け、当寺で赤報隊が結成されました。

境内

西向きの総門を入ると、左手に愛荘町立歴史文化博物館があり、その奥には塔頭の常照庵があります。総門から参道を進むと、左側に本坊の明寿院があり、そこから千体地蔵が並ぶ参道を数百メートル進むと二天門、さらに進むと本堂、そして本堂の左手高台に三重塔が建っています。かつて、この参道には多くの僧坊が立ち並んでいました。

本堂（国宝）

本堂は入母屋造、檜皮葺の和様仏堂で、中世天台仏堂の代表作として国宝に指定されています。桁行、梁間ともに7間で、須弥壇の金具に弘安11年（1288年）の銘がありますが、建築様式からは南北朝時代の建立と見られています。内部は、手前の3間分が礼堂、奥の2間分が内陣、最も奥の2間分が後戸と区分されています。後戸は左右端が堂蔵となっています。本尊を安置する厨子も同時期の作と見られ、本堂の附として国宝に指定されています。本尊の聖観音立像は、行基が一刀三礼で制作したとされる「生身の観音」で、秘仏とされています。

三重塔（重要文化財）

本堂の左手に建つ三重塔は、寺伝では鎌倉時代の建立とされていますが、様式的には南北朝時代の建築と見られています。織田信長の焼き討ちを免れましたが、近世以降は荒廃し、初層と二重目の軸部を残すのみとなっていました。現在の塔は、1975年から1978年にかけて修理復元されたものです。

二天門（重要文化財）

二天門は、様式上室町時代前期の建築とされています。寺伝では、元々は楼門（2階建ての門）でしたが、2階部分が失われたとされています。組物の形式などから、楼門の上層部が失われたか、楼門として建てられる予定だったものが未完成に終わったと考えられています。

その他

境内の参道には、かつて僧坊が建ち並んでいた跡や、千体地蔵が祀られています。また、不動堂、地蔵堂、西谷堂、明寿院、書院、玄関、庫裏などの建物も存在します。

庭園（国指定名勝）

安土桃山時代から江戸時代にかけて整備された池泉回遊式庭園は、3つの庭で構成され、全てが名勝に指定されています。桃山時代の庭には石橋や宝篋印塔が、江戸時代初期の庭には石組が、江戸時代中期の庭には池に石造りの宝船が配置されています。

その他

護摩堂、茶室「水雲閣」、常照庵、愛荘町立歴史文化博物館、総門（黒門）、大行社などが境内に存在します。

文化財

金剛輪寺は多くの文化財を所蔵しています。国宝の本堂と厨子、重要文化財の二天門、三重塔、木造阿弥陀如来坐像、木造十一面観音立像、木造不動明王立像、木造四天王立像、木造慈恵大師坐像、木造大黒天半跏像、銅造孔雀文磬、金銅蓮華唐草文透彫華鬘など、多数の文化財が指定されています。また、明壽院庭園は国指定名勝です。

交通アクセス

金剛輪寺へは、タクシー、車、路線バスでのアクセスが可能です。JR稲枝駅や彦根駅からタクシーで、名神高速道路のインターチェンジからは車でアクセスできます。また、JR稲枝駅や近江鉄道愛知川駅、豊郷駅からは「愛のりタクシーあいしょう」が利用できます。

周辺施設

寺に隣接して愛荘町立歴史文化博物館があります。

金剛輪寺は、その歴史、文化、自然の美しさから、多くの人々にとって訪れる価値のある場所です。特に紅葉の季節には、その美しさを一目見ようと多くの観光客が訪れます。

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