鈴鹿王

鈴鹿王（すずかのおおきみ/ すずかおう）

鈴鹿王は、飛鳥時代から奈良時代にかけて生きた皇族であり、太政大臣・高市皇子の次男にあたります。最終的な官位は従二位・知太政官事でした。

生涯

和銅3年（710年）に二世王として従四位下に叙せられたのが、記録に見られる最初の官位です。聖武天皇の時代に入ると、神亀3年（726年）に従四位上へと昇叙しました。神亀6年（729年）に長屋王の変が起こり、兄である左大臣・長屋王が自害するという事態に見舞われます。しかし、鈴鹿王の邸宅には勅使が派遣され、長屋王の親族は赦免されることとなり、鈴鹿王は連座を免れました。その後、間もなく正四位上に叙せられています。

天平3年（731年）には参議に任ぜられ公卿に列し、天平4年（732年）には従三位に叙せられました。天平9年（737年）には藤原四兄弟が相次いで亡くなり、朝廷の要職に空席が目立つようになったため、鈴鹿王は参議から知太政官事に任命され、橘諸兄と共に政権を主導することになります。この異例の昇進は、長屋王の霊を鎮める意味合いがあったとも言われています。また、疫病により議政官級の皇族・貴族が多数亡くなったため、急遽、大臣と同格の知太政官事を設ける必要に迫られたという背景もあったようです。ただし、政治の実権は橘諸兄が握っており、知太政官事の地位は象徴的なものに過ぎなかったとされています。橘諸兄が右大臣に任じられ、位階的に鈴鹿王を上回ったことで、知太政官事の地位は太政大臣の下から右大臣の下へと位置付けが変わったという説もあります。

天平10年（738年）には正三位に昇叙し、天平15年（743年）には従二位に至りました。天平12年（740年）に藤原広嗣の乱が発生した後、聖武天皇は頻繁に各地へ行幸しましたが、その都度、鈴鹿王は留守役を務めています。

天平17年（745年）9月4日に薨去。最終官位は知太政官事兼式部卿従二位でした。鈴鹿王の死後、知太政官事が再び任命されることはなく、彼が最後の知太政官事となりました。

神護景雲4年（770年）には、佐紀にあった鈴鹿王の邸宅跡に称徳天皇の御陵が造営されました。その場所は高塚古墳であると推定されていますが、異論も存在します。

官歴

和銅3年（710年） 正月13日：従四位下（直叙）
神亀3年（726年） 正月21日：従四位上
神亀6年（729年） 3月4日：正四位上
時期不詳：大蔵卿
天平3年（731年） 8月11日：参議
天平4年（732年） 正月20日：従三位
天平9年（737年） 8月28日：知太政官事
天平10年（738年） 正月13日：正三位
天平12年（740年） 2月7日：留守役（聖武天皇難波宮行幸）。10月29日：留守役（聖武天皇伊勢国行幸）。11月14日：兼式部卿
天平14年（742年） 8月27日：留守役（聖武天皇紫香楽宮行幸）。12月29日：留守役（聖武天皇紫香楽宮行幸）
天平15年（743年） 5月5日：従二位。7月26日：留守役（聖武天皇紫香楽宮行幸）
天平16年（744年） 閏正月11日：留守役（聖武天皇難波宮行幸）。2月2日：恭仁宮留守役（聖武天皇難波宮行幸）
天平17年（745年） 9月4日：薨御（知太政官事兼式部卿従二位）

系譜

父：高市皇子
母：不詳
生母不詳の子女
男子：豊野出雲（?-777）
男子：豊野篠原
男子：豊野尾張
四男：豊野奄智（?-784）
男子：豊野五十戸

参考文献

宇治谷孟『続日本紀 （上）』講談社〈講談社学術文庫〉、1992年
宇治谷孟『続日本紀 （中）』講談社〈講談社学術文庫〉、1992年
『朝日日本歴史人物事典』朝日新聞社、1994年
『公卿補任 第一篇』吉川弘文館、1982年
宝賀寿男『古代氏族系譜集成』古代氏族研究会、1986年

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