長崎英語伝習所

長崎英語伝習所：日本の英語教育の礎

長崎英語伝習所は、安政5年（1858年）に江戸幕府によって設立された、日本初の系統的な英語教育機関です。開国を迫られた幕末の日本において、国際的な交渉や交流を担う人材育成の必要性が高まり、そのために英語に通じた人材を育成することを目的に設立されました。

歴史

設立の背景

日米和親条約をはじめとする条約締結後、幕府は洋学研究の必要性を痛感し、蕃書調所を設置して洋書翻訳事業を行いました。しかし、安政五カ国条約の締結により、英語通訳の養成が急務となり、長崎に英語伝習所が設立されることになりました。

草創期

長崎奉行の岡部長常によって設立された英語伝習所は、オランダ海軍将校ウィッヘルスやオランダ人デ・ホーゲル、イギリス人ラクラン・フレッチャーらが教鞭を執りました。生徒は通詞や地役人の子弟のほか、英語を学びたい有志が集まり、評判を聞きつけた西南諸国からも修業に訪れる者もいたそうです。

その後の変遷

英語伝習所は、時代とともに名称や場所を変えながら発展しました。英語稽古所、洋学所、語学所、済美館と改称を重ね、明治維新後には長崎府管轄の広運館、官立の長崎英語学校へと引き継がれました。そして、1878年には旧・長崎県立長崎中学校となり、現在の長崎市立長崎商業高等学校、長崎西高等学校へと繋がっています。

教育内容と特徴

英語伝習所では、実践的な英語教育が行われました。教師には、本場の英語に触れられるよう外国人が多く招かれました。また、語学だけでなく、歴史、地理、数学、物理、経済など、幅広い知識を学ぶことができたことも特徴です。当初はキリスト教布教が許されていなかった外国人宣教師達の就職場所にもなっていたようです。

主な教師と生徒

教師

グイド・フルベッキ
チャニング・ウィリアムズ
瓜生寅
ヘンリー・スタウト

生徒

立石斧次郎
何礼之
平井希昌
大隈重信
柴田昌吉
日下部太郎
山口尚芳
馬場辰猪
西園寺公望

これらの教師、生徒たちは、その後の日本の近代化に大きく貢献しました。大隈重信は早稲田大学を創設し、西園寺公望は総理大臣を務めるなど、各界で活躍する人材を輩出しています。

現代への繋がり

長崎英語伝習所の流れを汲む学校は、現在も長崎の地で教育活動を続けています。また、長崎歴史文化博物館には石碑が建てられ、その歴史を今に伝えています。

長崎英語伝習所は、日本の英語教育の先駆けとして、その後の日本の国際化に大きく貢献しました。その功績は、現代においても高く評価されています。

関連項目

長崎海軍伝習所
長崎養生所
長崎英語学校
横浜仏語伝習所
開成所

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