長良型軽巡洋艦

長良型軽巡洋艦

長良型軽巡洋艦は、日本海軍が建造した二等巡洋艦（軽巡洋艦）であり、同型艦は6隻を数えます。この艦級は、いわゆる5,500トン型軽巡洋艦に分類され、先行する球磨型に続く第2グループに位置づけられます。

概要

1917年（大正6年）の八四艦隊案に基づき、日本海軍は巡洋艦建造計画を修正し、5,500トン型軽巡洋艦8隻と「夕張」を建造しました。5,500トン型の初期5隻は球磨型に属し、残りの3隻が長良型の「長良」「五十鈴」「名取」です。1918年（大正7年）の八六艦隊案では、さらに3隻の5,500トン型艦の予算が承認され、「由良」「鬼怒」「阿武隈」が建造されました。

長良型は球磨型からの大きな変更点として、以下の点が挙げられます。

搭載魚雷を53cmから61cmに強化。
羅針艦橋下に航空機格納庫を設置し、その前方に滑走台を設置。
これらの変更に伴い艦橋構造が変更され、司令塔は廃止。

太平洋戦争開戦までに、多くの改装を経て装備が強化された結果、排水量は7,000トン近くまで増大し、速力は33ノットから32ノット前後に低下しました。また、「阿武隈」を除く5隻と「夕張」は、1942年（昭和17年）から1944年（昭和19年）にかけて老朽化のため第一線から退く見込みとなり、代艦として④計画で阿賀野型4隻と大淀型2隻が建造されることになりました。しかし、代わる艦が不足していたため、太平洋戦争では各艦とも第一線で活躍しました。

艦型

長良型は球磨型の改良型として設計されました。船型、主要寸法、機関出力、速力、備砲、機雷搭載量に変更はありません。主な変更点は以下の通りです。

水雷兵装

魚雷兵装は、魚雷数と発射管数は球磨型と同じですが、魚雷を六年式53cm魚雷から八年式61cm魚雷に変更しました。これは、当時の主力艦の戦闘距離が伸び、53cm魚雷では射程が不十分となったためです。この変更により、長良型は当時世界水準において有数の攻撃力を持つこととなりました。発射管の位置も球磨型と同じですが、短艇甲板を後方に延長して、後部発射管はその後ろに収められました。これにより後部構造と短艇甲板は連続する形となりました。なお、短艇甲板の延長は球磨型の各艦も後日、同様の改装を行っています。

航空兵装

球磨型では水上偵察機1機を搭載していましたが、発艦装置がなく、水上に降ろして発進させる必要がありました。この方式では艦の機動性が犠牲になり、当時の水偵は外洋での発進が困難であったため、実用性に乏しいものでした。日本海軍は射出機の実用化においても遅れをとっていました。

そこで長良型では、艦橋構造を拡大して羅針艦橋下に格納庫を設け、その前方に滑走台を設置しました。滑走台方式はイギリス海軍が開発した方式で、前型（球磨型）の「木曽」で実験が成功していました。滑走台は船体に固定され（「木曽」では2番砲上に設置）、前方に傾斜が付けられました。また、艦橋側面に飛行機積み込み用のデリックが設置され、搭載機は一〇年式艦上戦闘機を偵察機として使用しました。この滑走台方式は一応実用化には達しましたが、発艦した機体を回収できないという不便さがありました。就役後、航空機はまれにしか搭載されず、滑走台はほとんど使用されませんでした。

艦橋

艦橋構造は、格納庫を設けた関係で司令塔が廃止され、代わりに操舵室が設けられました。羅針艦橋は球磨型の三角形に近い平面形状から、矩形に変更されました。面積は広くなりましたが、斜め前方に角があり視界が悪いという欠点がありました。羅針艦橋が露天である点は球磨型と同様です。

機関

機関も球磨型と同様で、主機は高圧タービンが技本式衝動型、低圧タービンが三菱パーソンズ式反動型のオール・ギアード・タービンです。川崎造船所建造の「鬼怒」のみ、主機にブラウン・カーチス式タービンを装備しており、巡航タービンを装備していませんでした。また、ボイラーには過熱器が装備され、過熱蒸気（他の艦は飽和蒸気）を使用していました。そのため、他の艦よりも排水量が100トンほど多かったとされています。なお、「鬼怒」のタービンはトラブルが多かったと言われ、就役後まもなく大修理を行っています。

その他

球磨型にあった後部艦橋は廃止されました。また、7番砲下にあった機雷庫も廃止されています。

兵装の変化

竣工後

竣工後まもなく、前部マスト上の射撃指揮所の下方に魚雷戦用の測的所が新設されました（「阿武隈」は竣工時から設置）。1931年（昭和6年）頃までに測的所はさらに拡大され、艦橋後方に作戦室と電信室が設けられました。前部マストは複雑な構造になり、同時期に煙突に雨水除けが装着されました。方位測定儀はX字型アンテナから菱形状のものに交換され、三年式機砲も留式7.7mm機銃に交換されました。

近代化改装

1932年（昭和7年）から1935年（昭和10年）にかけて、長良型の各艦は順次近代化改装が行われました。航空兵装の刷新が中心となり、前後マストに見張所を新設するなどの変更が行われました。近代化改装後も、太平洋戦争開戦までにボイラーの重油専焼化、前部マストの短縮、探照燈の換装、方位測定儀アンテナの換装などが行われています。

航空兵装

射出機は1930年（昭和5年）に陸上試験を行った萱場式射出機が、同年「由良」に初めて搭載されました。射出機は滑走台上に設置され、水上偵察機1機を搭載しました。しかし、この射出機は事故が多発したため、「由良」搭載の1基だけで製作は打ち切られました。

「鬼怒」は1930年10月に呉式2号2型射出機を滑走台上に装備し、九〇式一号水上偵察機を搭載しました。近代化改装により、「由良」「鬼怒」を含む長良型各艦は5番砲と6番砲の間に支柱を設け、呉式二号三型射出機を装備しました。滑走台は撤去され（または後に撤去）、格納庫は司令部施設や通信施設に転用されました。後部マストにはデリックが装備され、補強のためにマスト下部は三脚式に改められました。また、水上偵察機の揚収や整備のため、付近の短艇甲板が拡大されました。「長良」は右舷側を拡大、「名取」は左舷側を拡大するなど、各艦で違いが見られました。搭載機は改装時は九〇式水上偵察機、その後九五式水上偵察機を経て九四式水上偵察機に変更され、太平洋戦争開戦時もそのまま搭載されていました。

対空兵装

竣工時に2挺が装備されていた三年式機砲（口径6.5mm）は、1931年（昭和6年）から1934年（昭和9年）にかけて留式7.7mm機銃に交換されました。これらの単装機銃の装備位置については短艇甲板との記述が多いですが、正確な位置は不明です。第一煙突と第二煙突間の吸気塔上とする推測図面もありますが、同位置には1923年（大正12年）末に水雷戦用測距儀が装備されていたため、考えにくいとされています。この7.7mm機銃は1942年（昭和17年）途中に撤去されたとされています。

ウェルデッキ後方の短艇甲板前端に装備されていた8cm単装高角砲2基は、1932年（昭和7年）から1935年（昭和10年）にかけて九三式13mm連装機銃2基に換装されました。なお、「名取」のみは1937年（昭和12年）、8cm高角砲に換えて毘式40mm連装機銃を一時的に装備しました。93式13mm連装機銃は1941年の開戦までに九六式25mm連装機銃2基に換装されました。

1932年から1934年の近代化改装で、「名取」と「阿武隈」は不要となった滑走台の前端に九三式13mm4連装機銃1基を装備しました。後に滑走台は撤去されましたが、その際には改めて艦橋中央前方に機銃台が設けられて同機銃がそこに配置されました。その他の4艦は近代化改装で滑走台を撤去し、各艦は艦橋前面に13mm4連装機銃を設置しました（「由良」は機銃座のみの設置）。

太平洋戦争時

1942年（昭和17年）9月に沈没した「由良」の兵装は、開戦時から変更はなかったと思われます。太平洋戦争中の1942年（昭和17年）から1943年（昭和18年）にかけて、艦橋前の機銃は九三式13mm連装機銃1基に換装されました（文献によっては2基との記述が見られますが、これは誤りです）。「五十鈴」は防空巡洋艦に改装された際、この位置（羅針艦橋前）に九六式25mm三連装機銃2基を装備しました。

「阿武隈」と「長良」は1942年から1943年初めに5番主砲を撤去し、「阿武隈」は後部魚雷発射管上部のシェルター甲板に左右1基ずつの25mm3連装機銃を追加装備しました。「阿武隈」は1943年10月から11月、「長良」は1944年1月から4月の工事で7番主砲を撤去し、跡地に12.7cm連装高角砲1基を装備しました。射出機を撤去し、支柱上に25mm三連装機銃1基を装備しました。「五十鈴」「名取」「鬼怒」の3隻は1943年から翌年にかけて5番砲・7番砲を同時に撤去し、対空兵装を前の2隻と同様に強化しました。同時期およびそれ以降、艦上の各所に25mm単装機銃や13mm単装機銃が追加装備され、「あ号作戦後の兵装増備状況調査」によると、1944年8月調査の「長良」の場合で25mm3連装機銃2基、同連装機銃6基、同単装機銃14基、13mm連装機銃1基、同単装機銃8基とされています。

防空巡洋艦兼対潜掃討艦となった「五十鈴」は、14cm砲を全部撤去して12.7cm連装高角砲3基を装備し、25mm機銃も増備しました。

魚雷

太平洋戦争開戦時、「阿武隈」を除く5隻は九〇式魚雷（空気魚雷）を搭載していました。

「阿武隈」のみは1941年（昭和16年）に前部の魚雷発射管2基を撤去してウェルデッキを廃止し、後部発射管2基を四連装発射管2基に換装して九三式魚雷（酸素魚雷）の発射能力を得ていました。1944年（昭和19年）に防空巡洋艦へ改装された「五十鈴」も同様の改造を行い、酸素魚雷発射能力を有しました。また、「長良」も1944年の修理において、発射管は連装発射管4基のままとし、発射管の改造にて酸素魚雷発射機能を有したとする説もあります。

同型艦

長良
五十鈴
名取
由良
鬼怒
* 阿武隈

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