風宮(かぜのみや)は、
三重県伊勢市豊川町に位置する
伊勢神宮外宮(
豊受大神宮)の境内にある別宮です。外宮正宮の南方、檜尾山の麓に鎮座しています。祭神は内宮(皇大神宮)の別宮である風日祈宮と同じく、級長津彦命(しなつひこのみこと)と級長戸辺命(しなとべのみこと)です。
外宮の正宮前にある池の横、
多賀宮への参道にある亀石を渡った左手に風宮はあります。この亀石は、高倉山の天岩戸の入り口の岩を運んだと伝えられています。
別宮とは、正宮に次いで尊いとされる社であり、「わけみや」とも呼ばれます。外宮には、風宮の他に
多賀宮、土宮、そして境外には
月夜見宮がありますが、風宮が別宮となったのは
1293年(
正応6年)と最も遅く、四別宮の中では第4位とされています。
風宮は、古くは現在の末
社格の風社(かぜのやしろ、風神社とも)でした。しかし、
1281年(
弘安4年)の元寇の際に
神風を起こし、日本を守ったとされ、別宮に昇格しました。
祭神である級長津彦命と級長戸辺命は、風雨を司る神とされています。元々は農耕に適した風雨をもたらす神として祀られていましたが、元寇以降は日本の国難に際して日本を救う祈願の対象となりました。
風宮の由緒は定かではありませんが、
997年(
長徳3年)の『
長徳検録』に外宮所管の田社32前の4位の風社と記されたという記録が、最古のものです。「田社」は現在の末社に相当し、当時は摂社以下の扱いでした。しかし、祭神が農耕に都合の良い風雨をもたらす神であることから、風日祈祭が執り行われ、
神嘗祭では懸税(稲穂)が供えられるなど、重視されていました。
1281年(
弘安4年)の元寇では、朝廷より為氏大納言が勅使として神宮に派遣され、内宮の風神社と風社で祈祷を行いました。その結果、日本に押し寄せた元軍は退却し、この勝利を
神風によるものとして、
1293年(
正応6年)に風神社と風社は別宮に昇格し、それぞれ風日祈宮と風宮となりました。
江戸時代末期に欧米諸国が日本を訪れるようになると、
1863年(
文久3年)5月には朝廷が風日祈宮と風宮で攘夷の祈願を15日間行いました。また、
1876年(明治9年)の
伊勢暴動の際には、
月夜見宮近隣の町が炎上し、宮への類焼が懸念されたため、
月夜見宮の
神体が一時的に風宮へ移されました。
風宮では、毎年5月14日と8月4日に、風雨の順調と五穀の豊穣を祈る風日祈祭が執り行われます。
社殿は外宮に準じた、外削ぎの千木と5本の鰹木を持つ萱葺の
神明造で、南面しています。遷宮のための古殿地は、東西に隣接しています。
交通手段としては、JR
参宮線・近鉄
伊勢市駅から徒歩約12分、
三重交通外宮前バス停下車徒歩約5分です。また、
伊勢自動車道伊勢西インターチェンジからは約2kmの場所に位置しており、無料駐車場も完備されています。
風宮は、
伊勢神宮の中でも特に歴史と神話が深く結びついた場所であり、訪れる人々に深い感動と安らぎを与えてくれます。
参考資料
金子延夫『玉城町史 二巻 -南伊勢の歴史と伝承-』三重県郷土資料叢書第91集、三重県郷土資料刊行会、昭和58年12月10日
桜井勝之進『
伊勢神宮』学生社、昭和44年5月20日発行
桜井勝之進『伊勢の大神の宮』堀書店、昭和48年3月25日発行
関連項目
シナツヒコ
神風
元寇
豊受大神宮
伊勢神宮を構成する神社と施設
外部リンク
* 伊勢の神宮