月夜見宮

月夜見宮について

月夜見宮（つきよみのみや）は、三重県伊勢市宮後にある神社で、伊勢神宮の別宮の一つです。外宮（豊受大神宮）の北約300m、伊勢市駅から西へ約500mの場所に位置しています。この神社は、月夜見尊（つきよみのみこと）と、その荒ぶる神霊である月夜見尊荒御魂（つきよみのみことのあらみたま）の二柱の神を同じ社殿に祀っているという特徴があります。内宮（皇大神宮）の別宮である月讀宮では、月讀尊と荒御魂は別々の社殿で祀られているのに対し、月夜見宮では同じ社殿で祀られている点が異なります。

また、一つの社殿に二柱の神を祀る別宮としては、他に外宮別宮の風宮と内宮別宮の風日祈宮がありますが、これらの祭神は級長津彦命（しなつひこのみこと）と級長戸辺命（しなとべのみこと）です。月夜見宮は、外宮の別宮の中で唯一、宮域外に位置する神社でもあります。伊勢市街地にありながら、境内は静けさが保たれており、三方を囲む堀は宮川の支流の名残と考えられています。この堀の北側を通る三重県道37号線は、神嘗祭の際、初穂を奉納する奉曳車が通る道となります。

月夜見宮の社殿の右後方には外宮摂社の高河原神社が、左後方には稲荷社が祀られています。また、右側には大楠があり、祈りを捧げる人もいます。他の境外別宮と同様に、神職が常駐する宿衛屋があり、お札やお守りの授与、神楽や御饌の取次ぎが行われています。

祭神

月夜見宮の祭神は以下の二柱です。

月夜見尊（つきよみのみこと）
月夜見尊荒御魂（つきよみのみことのあらみたま）

月夜見尊は、内宮別宮の月讀宮の祭神である月讀尊と同じ神であり、天照大神（あまてらすおおみかみ）の弟神です。月の満ち欠けに基づく暦（太陰暦）を用いて農作業の計画を立ててきた歴史から、農業に関わりの深い神とされています。また、高河原の川の神、女性にゆかりのある神ともされています。『神名秘書』では、ご神体を鏡としています。

歴史

月夜見宮の由緒は明確ではありませんが、古くは高河原と呼ばれ、農耕の神を祀る神社であったと伝えられています。延喜式では外宮摂社の首位とされ、『止由気宮儀式帳』では「月讀神社」、『延喜式神名帳』では「月夜見神社」、『伊勢大神宮式』では「月夜見社」と記載されています。承元4年（1210年）に別宮に昇格しました。

明治時代には、外宮別宮の「つきよみのみや」は「月夜見宮」、内宮別宮の「つきよみのみや」は「月讀宮」と表記されるようになりました。1876年の伊勢暴動の際には、近隣の町が炎上したため、月夜見宮への延焼を避けるために神体を一時的に風宮へ移しました。また、太平洋戦争中の1945年の宇治山田空襲では、周辺の住宅がすべて焼失する中で、月夜見宮の社殿だけが軍隊の消火活動と焼夷弾の不発によって奇跡的に焼け残りました。しかし、この空襲で宿衛員嘱託が亡くなり、宮掌も大火傷を負いました。

祭事

月夜見宮では、皇大神宮に準じた祭事が行われています。祈年祭、月次祭、神嘗祭、新嘗祭などの諸祭には、皇室からの幣帛（へいはく）が供えられます。主な祭事は以下の通りです。

歳旦祭（1月1日）：新年を祝い、皇位の無窮を祈る祭り
元始祭（1月3日）：年始にあたり、天津日嗣の本始を祝う祭り
建国記念祭（2月11日）：神武天皇の建国の創祀を祝う祭り
祈年祭（2月18日）：年の初めに穀物の豊穣と国家の安泰を祈る祭り
天長祭（2月23日）：天皇誕生日を祝う祭り
風日祈祭（5月14日、8月4日）：風雨の災いなく五穀豊穣であるように祈る神事
月次祭（6月、12月）：国家の平安と天皇の福寿を祈る祭り
神嘗祭（10月18-19日）：神官がその年に収穫された穀物を奉献する祭り
新嘗祭（11月24日）：天皇がその年に収穫された穀物を神に供えるとともに自らも食し、収穫を感謝する祭り

式年遷宮

月夜見宮では、20年に一度の式年遷宮が行われます。第62回式年遷宮は2014年から2015年にかけて行われました。この遷宮では、立柱祭、上棟祭、檐付祭、甍祭、御戸祭、御船代奉納式、洗清、杵築祭、後鎮祭、川原大祓、御飾、遷御、大御饌、奉幣などの祭事が執り行われました。

境内

月夜見宮の社殿は、外宮に準じた外削ぎの千木と、5本の鰹木を持つ萱葺の神明造で南面しています。遷宮のための古殿地は東西に隣接しており、20年に一度遷宮が行われます。月夜見宮の所在地である宮後町の住民が役木を曳いていた際、火事が起きたため、八日市場町の住民が代わりに曳いたという伝承があり、御木曳初式では八日市場町の住民が月夜見宮に役木を奉曳することになっています。

境内には以下の施設があります。

月夜見宮：伊勢神宮外宮の別宮。
高河原神社：月夜見尊御魂を祀る外宮の摂社。
稲荷社
宿衛屋

神路通り

外宮の北御門から月夜見宮までの一本の道は「神路通り」と呼ばれ、神が通る道とされています。

信者団体

1960年に伊勢市在住の崇敬者を中心に月夜見講が発足し、後に月夜見宮奉賛会と改称されました。この奉賛会は、毎年4月と9月の19日に神恩感謝の祭を行っています。

交通

JR参宮線・近鉄山田線伊勢市駅から徒歩約10分
外宮北御門口から神路通り経由で徒歩約5分
三重交通新道バス停下車徒歩約3分
伊勢市コミュニティバス「おかげバス」月夜見宮前バス停下車すぐ
伊勢自動車道伊勢インターチェンジから約3km

駐車場は鳥居前に数台分しかありませんが、南側の道路にパーキングメーターが設置されています。

参考文献

『月夜見宮参拝のしおり』（発行：神宮司庁）
『お伊勢さんを歩こう』（発行：伊勢神宮崇敬会）
『お伊勢まいり』（発行：伊勢神宮崇敬会）
『宇治山田市史』
金子延夫『玉城町史 二巻 －南伊勢の歴史と伝承－』
出版事業本部 国内情報部 第三編集部 編『るるぶ お伊勢まいり』
三橋健『伊勢神宮 日本人は何を祈ってきたのか』
矢野憲一『伊勢神宮―知られざる杜のうち』
『伊勢神宮』楽学ブックス 神社1
『日本人なら知っておきたい 伊勢神宮と125の社』
『いま行く!伊勢神宮お参りパーフェクトブック』

関連項目

ツクヨミ
伊勢国の式内社一覧
神宮125社の一覧
神路通り

外部リンク

月夜見宮 - 伊勢神宮公式サイト
月夜見宮（つきよみのみや） - 神宮会館
伊勢市観光協会/月夜見宮
* 月夜見宮（つきよみのみや） - 伊勢志摩バリアフリーツアーセンター

もう一度検索